「世界遺産」という言葉を聞くと、アウトドア好きなら真っ先に「富士山」が頭に浮かぶのではないでしょうか。実は富士山が登録されているのは「世界文化遺産」。世界遺産には、「文化遺産」とは別に、自然美や生態系を評価して登録される「世界自然遺産」というくくりも存在します。現在日本には、5つの「世界自然遺産」が。それぞれどんな場所なのか、詳しく見ていきましょう。
多様な生物が生息する日本北部の世界自然遺産
まず紹介するのは、海と陸の生物が共存して豊かな生態系を誇る北海道の「知床」。知床の海は海氷ができる海洋のなかで最も緯度が低く、海氷が流れ着くポイントとしても有名です。知床沿岸域は海氷によって発生した大量のプランクトンを基盤として、海や陸の豊かな生態系が育まれているのが特徴。知床には南方系と北方系の動植物が混在しており、多くの希少種や固有種が生息しているのも評価ポイントになったようです。

続いて紹介するのは、青森から秋田にまたがる「白神山地」。ここは東アジアで最大の原生的なブナ林が広がっている山岳地帯です。これまで人為的な開発が入ってこなかったため、約3000万年前に北極に存在していたブナ林と近い生態系が維持されてきました。

希少な動物や地域固有の植物など、さまざまな生き物が生息している点も見どころの1つ。白神山地を訪れた際には、ぜひ手つかずの自然の中で育まれた生き物たちを観察してみてくださいね。
屋久杉で有名な鹿児島の屋久島も「世界自然遺産」
「屋久島」は日本列島の南に位置している島ですが、標高が約2000mの山岳を保有しているため、標高の高い場所では北海道のような亜寒帯に近い気候になります。そのため、日本全体の自然植生が標高ごとに“垂直”に生息する「垂直分布」が大きな特徴。1つの島で日本の北から南までの自然植生をみられる稀有な島として、1993年に世界自然遺産に認定されました。

屋久島は雨の多い島で、この気候も緑豊かな植物の生息を支えています。しかし、スギの樹にとっては土壌の栄養が乏しい環境であるため、一般的なスギの樹に比べると成長がゆっくり。環境に適応しながら、緻密な年輪や樹脂を多く含んだ樹齢1000年以上のスギの樹として成長します。
