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トンネルの街「横須賀」! 日産で話題の追浜のミステリアスなインフラ隧道を行く

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神奈川県横須賀市追浜(おっぱま)といえば、昨今では日産の追浜工場関連の報道で一躍全国区になった感じがしますが、横須賀は海軍カレーネタなどで軍港イメージが強いかと思います。首都東京の鎮守府として明治時代から横須賀は軍港として栄えてきましたが、じつはトンネルの多い街でもあるのです。

駅前アーケード商店街から歩いていけるトンネル群

横須賀市は100.81k㎡の面積で神奈川県内で6番目の広さです。ちなみに県内1位は横浜市で438.01k㎡です。その横須賀市内には古くから隧道、つまりトンネルが多く、道路用、鉄道用に水道用まで加えると150カ所以上あるそうです。他自治体まで調査したわけではないのですが、おそらく日本でも1、2を争う数ではないかと思われます。話題の追浜地区は7.125k㎡の面積です。同地区内には9町域ありますが、道路トンネルだけでも16に及ぶそうです。

今回、磨崖仏とクライマー人気で有名な鷹取山ハイクから追浜駅に下るついでに、アーケード商店街が残る駅周辺の隧道見学をしてみました。最初に訪れたのは向坂隧道です。

風格と歴史を感じさせるレンガタイルの坑門は一見して歩行者専用と察します。鷹取町と浦郷町をつなぐ全長67mのトンネルですが、幅は自転車2台並走でキツキツな感じです。もちろんクルマの通行は不可です。

トンネル内壁は蛇腹のパネルが使用されています。同地区観光協会のHPによれば、同隧道は昭和8年の建造とか。90歳を超えています。当初は素掘りだったそうですが、建造50年後の昭和58年に改修工事が行われ、今に至る姿となったようです。

トンネル内に防火水槽の表示があります。トンネルでの自動車などによる火災事故防止で防火対策の一環で整備が提唱されてはいますが、ここはクルマは通りません。坑門の近隣住宅等の生活防火施設として運用するのだろうと推察します。

トワイライトゾーン風な小学生御用達の通学路トンネル

向坂隧道を抜けて追浜駅前独特のアーケード商店街を折れて、平六トンネルに向かいます。国道16号に並行する市道から路地に踏み行った先のコンクリ法面が迫る隘路の先にあります。坑門前に歩行者専用の表示。同トンネルは昭和14年建造です。

トンネルの先には小学校。要は通学路ですね。全長90mで、向坂隧道より狭い、幅3mは市内最狭のトンネルだそうです。

小学生が安心して歩けるよう明るい白壁としています。古い話題を持ち出して恐縮ですが、SFドラマのトワイライトゾーンのような異空間への入り口の雰囲気を感じもします。追浜町と追浜東町の住民の方々にも利便性の高い隧道のようです。この隧道がないと、駅まで大回りを要求されます。

明治生まれの長老トンネルと交差する平成生まれ隧道

足を少し伸ばして深浦隧道へ。同隧道も幅のない隧道ですが、よく見ると片側に一段高い歩行帯があります。幅5.8mの隧道は全長106mです。驚くことに、この隧道は明治44年(1911年)生まれの114歳です。

同隧道は入江側の浦郷町と追浜東町を結んでいますが、かつて交通の便に難があった浦郷の住民たちが自ら切り開いた隧道だそうです。資料によると昭和47年竣工という記載もあります。おそらく、隧道内蛇腹のパネルなどの整備がなされたタイミングのことだろうと推察します。クルマの通行は可能です。

深浦隧道脇にある階段を上がった先に、東屋のある公園と高層住宅が立ち並んでおり、まったく景観が変わるのも面白かったりします。また隧道上に短いですがさらにトンネルもあります。平成20年建造の山之脇隧道です。全長29m、幅7mです。山之脇隧道は横須賀スタジアムと日産・追浜工場に直結しています。明治生まれと平成生まれのトンネルをつなぐのが階段というのも、入江と谷戸の多い横須賀ならではかと思います。

追浜駅近くの住宅街にある隧道は、クルマが通行不可な生活トンネルだったりしますが、横須賀の海に面した独特の地形と、生活者との関わりをうかがい知ることもできます。なんでも横須賀市の観光事業の一環として、トンネルガイドツアーの催行も催しされたそうです。興味のある方は同市観光協会などに問い合わせてみてはいかがでしょう。