ソトラバ

その山頂は行き止まり? 誰にも会うことがない六甲山のマイナーピークを登る「小天狗山」探索

楽しい外遊びはソトラバで。アウトドアWEBメディア Soto Lover

  • イワカガミ
  • とかが尾山
  • 東側
  • 小天狗山
  • 道標
  • 散り椿
  • 山々
  • 大藪谷
  • 芦屋奥池
  • 地図

東西約30km、南北約10km、神戸や阪神間のウラヤマである六甲山。931mの六甲最高峰をはじめ、無数のピークが集まった山塊です。摩耶山、高取山、再度山など、著名な山もあれば、名もなきピークも無数にあります。ちょっと気になる山名だけど、あまり人が訪れないマイナーピークというのもあって、ジャケ買いならぬ、山名萌えで行ってみようということになった「小天狗山」を紹介します。

六甲山の登山地図を見ていると、ホントにいろんな山があることがわかります。変わった山名のものもけっこうあって、キレット峰、ガベノ城、ごろごろ岳……。なんだか気になりませんか。

地図

ごろごろ岳は、「険しく猛々しい山には『岳』の名が付く! 六甲山地唯一の山“標高565,6m”の『ゴロゴロ岳』登山」でご紹介しましたが、登山道があることを示す赤い線が引かれている山、つまりはメジャーピークのひとつです。でも、この小天狗山には、登山道の線は引かれていません。道はあるか……?

涼しい標高500mの奥池を起点に探索開始

高級住宅街として知られる芦屋の市街地からずーっと山の奥の方にある「奥池」。このあたりは元々雨が少ないエリアなので、農業が主体だった時代は恒常的な水不足に悩まされてきました。下流の村々はどこも苦労していて、かつては水争いが絶えなかったとか。

そこで、今から約200年近く前の江戸時代末期のこと。蘆屋村の年寄(明治に入って村長)であった猿丸又左衛門安時が、芦屋川の上流にあたる奥山にため池の造成を計画。集落から遥か奥地にある山の中でもあり、当時は当然すべてが人力。着工から完成まで20年もかかったそうですが、これによって水不足が大幅に解消して、下流の村民たちにとても喜ばれたと伝えられています。そして、今も芦屋市の水源地「奥山貯水池」として活用されています。

芦屋奥池

奥池から小天狗山へは、いったん大藪谷という谷を下ります。登山地図に線は引かれていないけど、しっかりとした踏み跡がありました。

大藪谷

沢沿いは水音が涼し気なだけではなくて、なんとなく空気がひんやり。心地よいトレイルでした。二股になっているあたりから、沢筋を離れて小天狗山へ続く尾根筋をたどって行きます。

山々

六甲山地は周囲のすべてを市街地に囲まれているのですが、人工物がまったく目に入ってこないエリアも案外あるんですね。そして、まったく誰にも会いません。

お目当ては深山に咲く可憐な花

じつは、暑さに向かおうとする頃に咲く、街中ではまず見かけない花を探しながら歩いていました。近年、温暖化の影響なのか、いろんな花の時期がよくわからない感じになっているのですが、今年は早春に寒さが続いたせいか、本来もっと早い時期に咲くはずのヤブツバキが、初夏になってもまだ咲いていて、散りツバキの紅色が山道に彩りを添えていました。

散り椿

椿の花って、本来は冬から早春に咲くものだと思うのですが、今年はとても遅かったです。例年なら終わっているツツジの仲間もちらほらと咲き残るなか、お目当てのコを探しながら登ります。なかなかの急登で、実のところ花を探すどころではないのですけど。

そして、ついに発見!

イワカガミ

つやつやの葉っぱを鏡に見立てて、岩場によく生えていることから「イワカガミ」と呼ばれています。
うつむいて咲く房状の花びらがとても可憐で、かわいらしい姿をしています。六甲山地では、北側斜面に多い印象ですが、秘境の趣きがある小天狗山でも出逢うことができました。