アウトドアにおいて、クマによる人身被害はすでに他人事ではなくなっています。この2025(令和7)年10月5日にも、世界遺産・白川郷の合掌造り集落にクマが出没し、外国人観光客が襲われ軽傷を負っています。登山、キャンプのほか観光地でもクマに襲われるリスクはあります。クマに対する基本的な知識や襲われないための対策、襲われた場合のシミュレーションは行っておくべきでしょう。
今回は『ドキュメント クマから逃げのびた人々』(三才ブックス)にも登場しているアイテムはもちろん、クマに人の存在を知らせるグッズや、クマ撃退スプレーについて解説します。
「鳴り物」はクマに人を避けてもらうための必須アイテム
準備しやすい対策グッズの筆頭が「鳴り物」です。クマ鈴はスタンダードアイテム。さまざまなものがあり、下げるだけで音が鳴るので手軽に準備できます。
しかし、チリンチリンという可愛らしい音のものではなく、真鍮製のしっかりとした音が鳴る「ベル」型がおすすめ。そして腰から下など、常に音が鳴るような位置につけると効果的です。

クマ鈴以外でも、山歩きの場合は2人以上でしゃべりながら、10数mおきに手を叩くなどの対策もありますが、しかしクマ専門家によると、クマ鈴を含めて、それらの音にすでに慣れてしまったクマも多いともいわれています。
あらかじめ人の存在を「クマに知らせる」という目的のほかにも、クマが嫌がる音を発生させる電子ホイッスルや、高圧ガスを使用して大きな音を出す、ベアホーンなどもあります。

クマ撃退スプレーは事前にトレーニングができれば理想的
クマに遭わないことが大前提ですが、もしクマに「バッタリ遭遇」し、なおかつ、クマがこちらに向かってきたときのための最終手段が、クマ撃退スプレーです。
このアイテムは、グリズリーなどが棲息する北米で開発されたもの。北米では90%以上の確率でヒグマの攻撃を止めた効果が実証されており、日本のクマ研究者・クマ関係者は、山に入るとき必ず携帯するといわれています。

ただし、持っているだけでは無用の長物。正しい知識と使い方を知っておかなければなりません。
クマ撃退スプレーは、唐辛子成分であるカプサイシンを発射するものなので、誤って自分に降りかかってしまうと呼吸困難になり、クマ撃退どころではなくなります。風向きにはもっとも注意が必要です。
クマの顔を狙う噴射のタイミングも難しいこともあり、扱いにはトレーニングが必要です。製品によってはトレーニング用の缶がセットになっているものもあります。
いざというとき瞬時に手にできるよう携帯することが大切
そして、必ず専用のホルダーを使って腰やザックのショルダーベルトなどに装着、いつでも手にできるようにします。リュックの中に入れてしまうと、いざというときには間に合いません。
とっさのときには冷静にホルスターから抜き、安全装置が付いている場合はそれを外し、クマがまっすぐに向かってきたとき斜め下の角度に構え、有効射程距離(5~6m)に入るまで待ちます。そしてクマの目・鼻・口の粘膜を狙って一気にスプレーを噴射します。

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