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神奈川には10万匹? クリハラリスの困ったところとは

楽しい外遊びはソトラバで。アウトドアWEBメディア Soto Lover

接近時には注意を!適切な対処法を知る

可愛い姿の裏にある生態系への影響を考慮すると、クリハラリスに出会った際の適切な対処法を知っておくことが重要です。クリハラリスは適応力が高く、人を恐れませんが、安易な接触は避けるべきです。

「餌やりは、人間は餌をくれるものだと学習することに繋がり、餌を求めて凶暴になることがあり、実際に噛まれて流血する可能性があります」と田村先生は注意喚起します。

「餌を与えることはリスの数を不必要に増やすこと」になります。

リスだけでなく、人間側にもデメリットがあり、田村先生は「感染症などの病原菌に接触する機会も増え、衛生的に良くありません」と述べています。出没頻度が高くなることによる寄生虫や感染症のリスク増大も指摘されているのです。

クリハラリス/アップ

拡大阻止には市民の協力が不可欠

現在、神奈川では生息域が「1年に200mほどの拡大スピード」で広がっています。田村先生は、このまま拡大が進むことに対し、「このまま広がると丹沢山系から関東山地に入ってしまい、そうなると対策が打てず、山梨県や長野県の方にまで広がってしまうため早期の対策が必要」と警告を鳴らします。

富士山/引き

クリハラリスの拡大を阻止し、在来生物を守るためには、私たち市民の協力が不可欠です。クリハラリスを見かけたら、ぜひ『クリハラリス情報ネット』や市町村の担当などに情報を寄せてください。皆さんの情報が、対策を立てる上で最も貴重なデータとなります。

この情報提供こそが、クリハラリスの密度を不必要に高めず、将来的により大規模な駆除が必要となる事態を避けることに繋がります。

人間が出したゴミを食べる野生動物などが話題になっていますが、キャンプやBBQの時には食べカスを含む、人間の食べ物を残さないように心がけることや、クリハラリスを見かけた際の情報提供が重要だなと感じました。

ゴミ/引き

【取材協力】
国立研究開発法人森林総合研究所 多摩森林科学園 研究専門員

田村 典子(たむら のりこ)さん

【プロフィール】
1960年生まれ。東京都立大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。専門は動物生態学。著書に『日本の哺乳類学① 小型哺乳類』(共著、東京大学出版会、2008年)、『リスの生態学』(東京大学出版会、2011年)、『日本の外来哺乳類』(共著、東京大学出版会、2011年)、『タネまく動物』(共著、文一総合出版、2024年)などがある。行政関係者、学校、NPOなどのメンバーが集まって、広く市民からもクリハラリスの生息情報を収集・共有化し、効果的な捕獲対策につなげるの「クリハラリス情報ネット」代表。

■国立研究開発法人森林総合研究所 多摩森林科学園
https://www.ffpri.go.jp/tmk/

■クリハラリス情報ネット
https://sakaigawa.eco.coocan.jp/kurihara/kuriharalis_TP.html

■『となりのクリハラリス』(2025年8月刊/東京大学出版会)
https://www.utp.or.jp/book/b10136650.html