六甲山地は、周囲をすべて市街地に囲まれているので、どこからでも登れて、どこにでも降りられる、というのが大きな特徴のひとつです。しかし、南斜面は人口密集地の都市部であるため、アクセス抜群で登る人も多いのですが、北側は住宅地で鉄道が通っているとはいえ、南側と比べるとハイカーが少ない、非常に静かなエリアとなっています。
歩く人が少ないと道も不明瞭。ですが、地図を片手に探索する楽しみがあるので、筆者は案外そういうところが好きです。
北側山麓へのアクセスは「登山電車」
三宮から神戸市営地下鉄で谷上駅へ、そして神戸電鉄に乗り換えて有馬口駅へ。神戸電鉄は、湊川を起点に、小野市粟生駅へ伸びる粟生線と、三田市・有馬温泉方面を結ぶ2路線があり、全国7社の鉄道会社で結成する「全国登山鉄道‰(パーミル)会」に加盟しています。
ほかの6社、小田急箱根、富士山麓電気鉄道、大井川鐵道、アルピコ交通、叡山電鉄、南海電鉄道はなんとなく「登山鉄道」っぽい感じがするのですが、神戸電鉄(地元では「しんてつ」と呼んでます)は、山の上に行くわけではないので、ちょっとイメージが違うような。
でも、じつは勾配区間が80%以上あって、特別な車両を使っているのだとか。乗ってるだけだとぜんぜん実感がないですが。

車両の色がウルトラマンっぽいので、元々「ウルトラマン電車」と呼ばれたのですが、坂にも強い仕様なんだな。なるほど。
「有馬口」駅から住宅街の道を進み、阪神高速北神戸線の高架をくぐると林道になります。

一般車進入禁止のため、門扉が閉ざされているのですが、歩行者は脇から通れるようになっています。工事車両等限定の道ですが、あまり使われることもないみたいで、夏場は草が茂って廃道っぽく見えます。

「水無川」という川沿いの道ですが、けっこうな水音がしています。支流の「深戸谷」を過ぎると、急に踏み跡が薄くなります。このあたりが鬼ヶ島への分岐点。

草の勢いがすごくて、ルートがわかりにくいのですが、ココから谷筋を離れ、尾根へと登っていきます。登り始めからしばらくはものすごい傾斜で、ぼーっと歩いていると後ろに転げ落ちそうになるレベル。
足場をしっかり確認しながら、ゆっくり登りますが、たちどころに汗が噴き出します。そして蜘蛛の巣だらけ……。しばらく誰も歩いてないのね。ふと足元を見ると、真っ白でとてもかわいいキノコが生えていました。

真っ白だけど、タマゴタケにそっくり。足元に「ツボ」があって、うまれたてのときは卵のようなカタチのところから出てきたと思われます。テングタケの仲間のようで、食べたら死ぬやつかな。
急傾斜を登ること約30分、傾斜が緩くなってきて、のどかな感じの落葉樹の森になりました。

六甲山地では、2014年の台風11号によって270カ所もの崩壊が発生、その後防災対策が強化されました。このあたりも過密な樹林を間伐したり、危険な大径木を伐採するなどの対策が行われて、このような明るい森に生まれ変わったみたい。
存在感あふれるマザーツリーにご挨拶
六甲山地は、近世になってからは山麓の人口が増えて、木材が大量に伐採されるようになりました。明治に入るころには一部のエリアを除いてはげ山に近い状態になっていたとか。
明治の終わりころから森を復活させるため、緑化に取り組みはじめ、そこから100年余り。現在では緑豊かな山になっていますが、寺社林などの一部エリアをべつにすれば、樹齢の高い巨樹は非常に珍しい存在です。
そんな中、この尾根上には非常に大きなアカガシの木があって、「マザーツリー」と呼ばれています。

株立ちになっていて、四方にゆったりと枝を伸ばし、堂々たる姿でたたずんでいます。誰か人の姿が入れば大きさがわかるのですけど、あいにく誰もいませんでした。

マザーツリーを眺めながらしばしゆったりとした時間を楽しみ、山頂へと登っていきます。しかし、どこが山頂かよくわからない感じで、とくに眺望のいい場所もなく……。ふと見ると樹林のすきまから隣の逢ヶ山のいただきが見えました。

結局、何がどう鬼ヶ島なのかよくわからず、山名札も見つけられず。オニはどこ? なぜ島? 謎は謎のまま……。
鬼も島も発見できませんでしたが、面白いキノコに会いました。

今度は本物のタマゴタケ。でも、ここしばらくちっとも雨が降らないせいか、かさにたくさん裂け目が入って、へんな形になってます。ちょっと花びらみたいな感じで、2本が寄り添っている感じがかわいらしい。ほかにも、あちこちに巨大なキノコがたくさん生えていて、ちょっとした不気味ワールド。

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