5月中旬の日曜日に丹沢は西丹沢の開山祭が執り行われます。例年、この開山祭の前後に西丹沢の主峰である檜洞丸はシロヤシオの開花を迎え、多くの登山者がその可憐な花を愛でに訪れます。この時期にまだ満開には至っていないようですが、意外な穴場の山が近くにありました。畦ヶ丸です。
檜洞丸に1〜2週間先行開花の畦ヶ丸のシロヤシオ
畦ヶ丸は標高1292.6mです。いわゆる低山にカテゴライズされる山ですが、主峰の檜洞丸(標高1601m)と並ぶ西丹沢の盟主です。登山道には前半に渡渉を数回繰り返し、急登の箇所もあり、低山とはいえ丹沢ならではの難度の高さを感じさせる山です。

春のGW明けの西丹沢といえば、シロヤシオの話題で持ちきりになります。とりわけ檜洞丸ではつつじ新道の名前が登山道にあるように、ツツジが登山者を出迎えてくれます。この時期の西丹沢ビジターセンター行きのバスは、週末になると臨時便も出るほどにツツジ映え狙いの登山者で溢れかえります。とりわけ人気なのは5月中盤〜後半のシロヤシオです。

昨年の檜洞丸のシロヤシオは、やや控えめなものでした。その前年の2023年が見事なまでの乱れ咲きだったそうで、5月中頃に開催される西丹沢開山祭でも、地元観光協会の方が2024年は裏年に当たっているようだとスピーチされていましたっけ。

そこで例年、檜洞丸の最盛期の1週間から10日前に最盛期を迎えるといわれる畦ヶ丸で紅葉狩りならぬシロヤシオ狩りで、ひと足早く清らかで美しい純白の花と出会えます。シロヤシオは愛子内親王の御印として知られています。

山頂直下まで続く見事なシロヤシオ回廊に何度も足止め
先述したように畦ヶ丸へは幾度か沢を渡ることから始まります。沢沿い歩きが長いのが畦ヶ丸の特徴のような気がします。ビジターセンター裏の橋を渡り、堰堤を越えて沢を渡ります。

多くは沢には橋が架かっていますが、一部に渡渉もあります。降雨後は水量が増えることがありますので、渡渉ポイントでは気をつけてください。

本棚(ほんだな)と言われる滝への分岐を過ぎて、沢とは別れて登山道を登ります。丹沢特有の木段を伝い、標高を引き上げます。標高1000mを過ぎて、ようやく待望のシロヤシオが登山道上に姿を見せました。残念ながら、このあたりでは登山道上で出迎えてくれたのは、この1本だけでしたが、畦ヶ丸の本命はその先の善六のタワと呼ばれる分岐の先にありました。

見事なまでのシロヤシオの回廊は、トンネルのようと言っても大げさではないと思えます。鮮やかな緑に純白の花。清楚な美しさは山頂手前まで続きます。

そして時折トウゴクミツバツツジの紫色がアンサンブルしてきます。「シロヤシオだけではなく私も見て」とでも言いたげです。撮影で一向に前に進みません。

シロヤシオだけでなく見応えある滝も魅力
畦ヶ丸には檜洞丸のような営業小屋はありませんが、西沢からのルートでいえば山頂を行き過ぎた先の直下に避難小屋があります。トイレの利用が可能で、避難小屋周りにはベンチもあり、休憩に適しています。

ここからは東海自然歩道経由で大滝沢周りで箒沢に降り立つか、ピストンでビジターセンターまで戻るか、健脚なら白石峠周りの選択もありですが、この時期ならではのピストンで一度で二度美味しいシロヤシオ狩りも魅力的かと思います。

であれば、帰路では西丹沢ならではの美しい水巡りで滝見学もメニューに加えてはどうでしょう。畦ヶ丸の西沢ルート上には下棚(しもんたな)と先述の本棚の二つの滝があります。この地では滝を棚と呼ぶそうです。とりわけ本棚は落差60mを誇る丹沢最大級の滝だそうです。

本格的に暑い日々を迎える前の5月下旬から6月初旬。畦ヶ丸では涼を求めて、そして山中に可憐にしてエレガントさを見せつけるツツジ狩りも楽しめます。一年を通して楽しめる山ですが、ある意味今がもっとも旬な山と言えるかもしれませんね。
