岡本テキスタイルは、およそ150年前にイギリスの発明家ジョセフ ビバリー フェンビー(Joseph Beverley Fenby)によって発明されたキャンプ用折り畳み椅子『PARAGON CAMP FURNITURE(パラゴン キャンプ ファニチャー)』を復刻・商品化し、2025年11月1日よりオフィシャルサイトにて販売を開始しました。
偶然の一枚の写真から始まったこの復刻プロジェクトは、デニム生地メーカーとして「温故知新のものづくり」精神を掲げる岡本テキスタイルが、その技術と情熱を注ぎ込み、構造、素材、寸法を徹底的に再現。当時の機能美を現代に蘇らせるだけでなく、ハイバック仕様や本革座面バージョンなど新たな進化も加え、ヴィンテージキャンプファンや上質なライフスタイルを求める層に向けて展開します。
復刻プロジェクト始動の背景
PARAGON復刻プロジェクトは、アメリカの偉人たちが並んで座る一枚の古い写真との運命的な出会いから始まりました。1952年創業のデニム生地メーカーである弊社代表の岡本は、ヴィンテージコレクターの取引先で偶然、およそ100年前のキャンプ風景の写真を目にします。

写真には、ヘンリー・フォード(フォードモーター創業者)、トーマス・エジソン(発明家)、ハーベイ・ファイアストーン(タイヤ工場企業家)、ウォーレン・ハーディング(第29代アメリカ大統領)といった世紀の偉人たちが、シンプルながらも洗練されたデザインの折り畳み椅子に腰かけている姿が写っていました。

この椅子の持つシンプルさの中に隠された機能美、そして洗練された佇まいに心を奪われ、「この椅子は作れる。どうしても作ってみたい」と直感したことが、本プロジェクト発足のきっかけです。
ヴィンテージ復刻への使命感
直感はすぐに確信へと変わりました。「これは、我々が人生をかけてやり続けてきた、ヴィンテージデニムの復刻と同じだ」と。弊社は、ヴィンテージデニムに欠かせない赤耳付きのデニム(セルヴィッチデニム)を織るために、生産効率が悪く製造中止となっている旧式の織機(シャトル織機)を、自社で部品の製作やメンテナンスを行いながら守り続けています。この行動は、当時の風合いと文化を絶やさないという強い使命感に基づいています。

モノは違えど、素晴らしい文化遺産を形だけでなく、その背景にある物語ごと未来へ届け続けるという行為は、セルヴィッチデニム製織と同じです。時代の流れが速い今だからこそ、私たちが半世紀かけて培ってきた「文化を紡ぐ力」で、この新たな挑戦に臨むべきだと決意し、PARAGON復刻プロジェクトが本格的にスタートしました。
3年の歳月をかけた「忠実な再現」へのこだわり
ブランド自体がすでになく、情報も極めて少なかったPARAGONを復刻させるため、プロジェクトチームは手探りの情報収集と、極限までの素材・寸法へのこだわりを貫きました。設計図から紐解く150年前の構造は、アメリカの古本屋で当時の雑誌や書籍、設計図などを手に入れ、さらにきっかけとなった写真を所有の取引先から当時のヴィンテージ個体を入手。寸法、木材や金具の素材、構造の情報を詳細に収集しました。

とくに、座面の布地に関する現存資料がほとんどないため、アメリカの博物館で同時期の生地の種類や縫い目を徹底的に調査し、復刻のための手がかりとしました。
安全性と耐久性を担保する素材へのこだわり
現在の折り畳みチェアの多くが軽量化やコスト減のためにアルミや合板を使用する中、集めた資料からPARAGONが鉄製の金属パーツと広葉樹の木材を使用していることが判明。当時の完全復刻を目指し、同じ素材を調達しました。

リベットには、金属パーツと木材の連結にはネジではなくリベットを使用。これは当時の製法を忠実に再現するためであり、特殊なカシメる機械をメーカーに特注で製作。リベットでパーツを連結・固定することにより、パーツが外れることがなく、細い木材フレームながらも耐荷重100kgという高い安全性を実現。また、広葉樹の木材は、素材感を生かしたクリア仕上げと経年変化を表現したダークブラウン塗装の2種類を用意。どちらも天然由来成分の塗料を使用し、素材感を極力生かすことにこだわりました。
小数点以下4桁までの寸法再現
PARAGONの折り畳み機構は、すべてのパーツのサイズが寸分違わないことが前提に作られた、細部まで計算され尽くされた精緻な構造です。

入手した設計図はインチ表記であり、日本国内での製造のためにcmへ変換する際、小数点以下4桁までも忠実に再現しなければ、オリジナルのスムーズな折り畳み機構は実現できませんでした。『似たもの』ではなく『忠実に再現されたもの』を目指し、試作と検証を繰り返すことで、この複雑な折り畳み機構の復刻を叶えました。

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