急な落雷の対処法は「雷ポジション」と「分散避難」雷に撃たれたときの救助方法&注意事項のまとめ

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  • 積乱雲と雷鳴
  • キャンプ場にも設置されているAED
  • 落雷に対処する雷ポジション

   

落雷はよくある現象ですが、まれにその雷が人間に落ちることもあるといいます。今回は、もしも仲間や家族が雷に撃たれたときの対処方法や、雷に関する注意事項をアウトドア医療のプロに聞いてみました。

  

仲間が雷に撃たれたら──

  

もし野外で、雷に撃たれた仲間が心肺停止を起こしていた場合、まず救急要請を行うことはもちろんですが、救急隊を待つ間、速やかに心肺蘇生を試みましょう。雷による心肺停止からの蘇生例では、一般的に呼吸が戻る前に心拍が回復すると言われているので、心臓マッサージのみならず、人工呼吸も行えるとよいでしょう。

キャンプ場などの管理棟にAED(自動体外式除細動器)があり、心配蘇生をしている間に他の仲間が取りに行くことができるのであれば、使用を考慮します。訪れるキャンプ場などに、AEDが設置されているかどうか、事前に確認しておきましょう。

心肺停止を起こしていなかったとしても、落雷のダメージは体のさまざまな箇所に及んでいる可能性が高く、通常早期の病院受診が必要となります。

  

   

積乱雲から直接人体に雷が落ちる直撃雷はまれですが、落雷を受けた樹木などから人体へ雷が飛び移るサイドスプラッシュ(側撃雷)や、電流が地面を伝わるグランドカレント、地面から上がってくるストリーマーなどに巻き込まれ、電撃を受けることもあります。雷による心肺停止では、通常一瞬で心臓と呼吸が同時停止すると言われています。

「もちろん即死の場合もありますが、実は雷による心肺停止は、適切に心肺蘇生を行えば回復する確率が高い事故でもあります」と、救急医の稲垣さん。あきらめずに行うことが大切です。

AEDを使う場合、まずは落ち着いて。電源を入れれば、あとは音声が指示を出してくれるのでそれに従えばいいだけです。電気ショックの必要や不要なども判断して教えてくれます。

  

  

ただし、救助する場合の条件があります。それは、その場の状況が安定していること。助ける人たちが全員積乱雲の中にいる場合は、雷が引き続き落ちて多数の犠牲者が出る恐れもあります。直ちに助けたいと思う気持ちが起こるのは当然ですが、あなたや他の仲間の安全を優先しなくてはいけません。そのような場合は救助要請を行い安全な場所に避難をして待ちます。

  

落雷が起こった時の対処法

   

基本的に落雷は、季節に関係なく発生します。出かける前には行く場所の天気予報をよくチェックしておくこと。現場では、気温が下がる、風が強くなりあたりが急に暗くなる、雨が降る、雷鳴が聞こえるなど、落雷の兆しがあった場合はそれを見逃さないこと。合わせて降水、竜巻発生確度、雷活動度の分布について、1時間先までの予測を随時発表する気象庁の予報システム「ナウキャスト」の情報をスマートフォンなどで確認しましょう。

「海上や平原などの開けた場所や、山頂や尾根などの高いところなどでは人に雷が落ちやすいので、できるだけ早くクルマの中や鉄筋コンクリートの建物、山小屋など壁に囲まれた建物の中に避難してください」。(稲垣さん)

テントに逃げ込むのでは不十分です。建物がどこにもない場合は、できる限り雷雲から離れられる方向へ移動します。とはいえ、雷雲の射程距離範囲は10km程度と言われているので、その外に逃げることは簡単ではありません。人数が複数いる場合は必ず分散避難を行い、全滅を防ぐことも大切です。

どうしても避難できる場所がないときには、落雷の確率を少しでも減らす姿勢「雷ポジション」をとるなど、最低限の知識は身につけておきましょう。そして、心肺蘇生法の講習会などに参加して、いざというときに備えることも重要です。

  

■監修:稲垣泰斗

■プロフィール:救急医、Tight medical works代表、WMAJ野外災害救急法医療アドバイザー、北里大学医学部地域総合医療学特任助教。好きなアクティビティは登山、トレイルランニング、生き物観察。2児の父でもある。

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