近年、ゲリラ豪雨という言葉をよく聞くようになってきました。短時間で積乱雲が発達し、局地的に非常に激しい雨が降る現象を「ゲリラ豪雨」と呼んでいます。筆者のホームマウンテン・六甲山麓で、急な雨で川が増水し、下流にいた人々が流される事故がありました。2008年7月28日のことです。
この日、14時頃までは晴れていて、多くの人が六甲山南麓を流れる都賀川沿いの親水公園で、水遊びや散歩を楽しんでいました。しかし、前線の活動が活発化、13時20分に大雨洪水注意報、55分に大雨洪水警報が発表されていたのですが、野外にいる人たちは誰も気づいていませんでした。
14時30分頃、急に雷が鳴りはじめ大雨となりました。降雨を見て早々に避難した人もいましたが、わずか10分程度の間に川は急激に増水、逃げ遅れた16人が濁流に流されました。懸命の救助活動が行われましたが、幼稚園児や小学生を含む5名が帰らぬ人となったのです。

山の斜面に降った雨は、沢に集まりながら流下し、下流域では勢いを増して、想像を超えた速さで増水することがあるのです。17年も前の事故ですが、いまだに忘れることができません。
都市部のヒートアイランド現象もゲリラ豪雨の原因のひとつと言われていますが、山麓から山肌をかけのぼるように上昇気流が発生しやすい山地は、元々このような現象が置きやすい条件が揃っています。
強い雨だけではなく、突風や雷、ひょうなどを伴うこともあります。登山中には、最も遭遇したくない天候のひとつです。

ゲリラの急襲を避けるには
ゲリラ豪雨は、局地的な現象であることが多いので、発生の予測は難しいとされています。しかし、原因となるのは「積乱雲」ですので、その発生メカニズムを把握しておけば、ある程度は危険性を知ることができます。
積乱雲を発達させる大きな要因は、「大気の状態」。
天気予報で「大気の状態が不安定なため……」というフレーズがでてきたら、「急な強い雨や突風にご注意ください」と続くことが多いですね。夏など、強い日射が降り注ぐと、地表面が急激に温められますが、このとき上空に冷たい空気の層があると「大気の状態は不安定」となります。
冷たい空気は密度が高くて重いので、地表面で温度が上がって軽くなった層とバランスがとれなくなって、上下が入れ替わろうとして一気に上昇気流が発生するのです。

湿度が高く、かつ温度も高い太平洋高気圧に覆われる季節は、とくに局地的な大雨が降りやすい時期と言えます。登山に行く前には気象情報を確認する習慣をつけておきましょう。
とは言え、夏場は高い山に行きたい季節。「大気の状態が不安定」なときを完全に避けるとなると、そもそも夏山に行けなくなってしまいます。
ピンポイント予報や雨雲レーダー、雷アラートなど、各種の気象情報を注視しつつ、ゲリラ豪雨発生の確率が比較的低い、早めの時間帯に行動を終えるような計画を立てるなど、なるべくリスクを下げる方法を考えてみてください。
