行動中に悪天に遭遇してしまったら?
事前に情報収集をしていても、急な天候の変化が起きる可能性はあります。山で行動中に、にわかに悪天になってきたらどうしたらいいでしょうか。
山頂や稜線上は、気象条件が悪いときにはリスクの高い場所です。入道雲がどんどん発達してきたり、黒い雲に覆われてきたり、急に冷たく湿った風が吹きはじめるなど、天候悪化の兆候が感じられたら、すみやかに下山するなり、近くの山小屋などに逃げ込んでください。
近くに建物がないときは、稜線上から離れて、できれば樹林帯の中に逃げ込みましょう。
遠くで雷鳴が聞こえるようなら、雷雲はすでに10km以内まで接近しています。そんなときには、稲光と雷鳴の間隔を確認しましょう。光速で到達する稲光と比べて、雷鳴は音速なので、遅れて到達します。例えば、光ってから10秒後に雷鳴が聞こえた場合、340m×10秒で3.4kmの距離にあるということです。
その間隔が短くなってくるようなら、雷雲が接近してきています。
大粒の雨や霰が降ってくるときも雷雲接近の可能性があります。頑丈な建物に避難するのがベストですが、無理であれば、少しでも安定した低いところへ。
万が一雷雲の中に飲み込まれてしまったら、少しでも周囲より低い場所で、両足を揃えてなるべく低い姿勢でしゃがみ込み、鼓膜を守るため両手で耳を覆いながら、雷雲が去るのを待ちます。このとき、トレッキングポールなど長いものが突き出された状態にならないように気をつけてください。避雷針と同じ効果になるからです。
近くに高い木や突き出した岩塔などがあるなら、てっぺんを45度の角度で見上げる位置(保護範囲)で、かつ、その高いものに雷が落ちた場合、側撃雷(落雷した物体から電流が周囲に飛ぶことがある)に遭わないよう、4m以上離れること。
雷被害については、日本大気電気学会のホームページが参考になります。
また、大雨で身体が濡れると低体温症のリスクがあります。雨雲が接近していそうなら、早めに雨具を着用するようにしましょう。
ゲリラ豪雨は、降っているその場にいることが危険なだけではありません。もし、沢沿いにいたり、沢を渡る箇所があるコースの場合、上流のどこかでゲリラ豪雨が降れば、冒頭の事例のように、沢の水が一気に増水する可能性もあります。

ふだんは飛び石で渡れる箇所が通れなくなることもあるので、予定コースに沢が含まれているときは、上流域にも注意を払うようにしておきましょう。
地球温暖化の影響もあり、日本近海の海水温が高くなっています。雨雲のもととなる水蒸気がたっぷりと供給される状況になりやすいこともあって、線状降水帯や、ゲリラ豪雨が増えてきている気がします。これまで以上に注意が必要ではないかと思います。
【データ】
■気象庁
雨雲の動き・雷活動度・竜巻発生確度(ナウキャスト)
https://www.jma.go.jp/bosai/nowc/■日本気象協会
雷レーダー
https://tenki.jp/thunder/forecast.html
雨雲レーダー
https://tenki.jp/radar/■日本大気電気学会
ホームページ
https://www.saej.jp/
雷から命を守るための心得
https://www.saej.jp/publications/hint.html