初夏になると登りたくなる山。それが大和葛城山です。大阪府と奈良県の府県境に峰を連ねる、金剛山地の一角にある標高958mの山。山頂部はなだらかで、東を向けば大和盆地、南には金剛山、西は大阪平野から大阪湾を望む大パノラマが広がります。東麓からロープウェイも運行されていますが、せっかく新緑が美しい時期なので、北尾根コースを歩いて登ることにしました。
奈良盆地が見渡せるビューポイント
ロープウェイの葛城登山口駅から山頂部へ登るには、「くじらの滝」コースと、沢をはさんで北側に伸びる尾根筋を辿る「北尾根」コースがあります。北尾根コースは、初めのうちはものすごい急登なのですが、30分ほどがんばると、ご褒美の絶景が広がるビューポイントへ。

眼下には奈良盆地。南側には吉野や大峰、台高山脈の山々が連なって見えています。あのあたりもいい山がいっぱいあるので、登りに行きたいなぁ、と思いながら眺めていました。
尾根を登りきって、二上山から金剛山につながる主稜線上の「ダイヤモンドトレイル」に合流すると、比較的なだらかで歩きやすい道になります。遊歩道として整備されており、ブナなどの広葉樹が展葉する季節は、新緑が美しく、うっとりするような眺めになります。

頭上を覆う緑も美しいのですが、この時期に見ることができるちょっと変わった花を探してみましょう。
「春の女神」が訪れる不思議な花
「葛城山のギフチョウ」は、地元の御所市指定天然記念物で、「文化遺産オンライン」にも掲載されています。ギフチョウは日本の固有種で、蝶の姿で現われるのは春先から初夏にかけて。成虫はこの辺りに自生しているカタクリの花などから吸蜜し、同じくこのエリアに自生する「ミヤコアオイ」という植物の葉の裏に産卵します。

ミヤコアオイは、ウマノスズクサ科の多年草で、近畿以西~島根県あたりと四国の西部に分布。ちょっとおしゃれな感じの模様が入った葉っぱが特徴です。葉っぱをめくってみると、地面にひっそりと、とても変わった花が咲いていました。

とても花とは思えない、不思議な色とカタチをしています。地味すぎてほとんどの人はこんなところに花が咲いていることに気づきません。ギフチョウに逢えないかと期待したのですけど、お姿は見当たらず……。
遊歩道からいよいよ絶景の山頂部へ
新緑の森の中に続くトレイルを進み、なだらかな山上エリアの先にある頂上を目指します。標高958m、大阪府の最高峰です。ちなみに、南隣に屹立する金剛山は標高1125m。稜線上に府県境があるので、大阪府の最高峰は金剛山と思われがちなのですが、山頂部があるのは奈良県側なんです。
つまり、大阪府で最も標高が高い「最高地点」は、金剛山なのですが、山頂として一番高いのは大和葛城山なんです。でも、大阪府の最高峰なのに、「大和」が頭に付くっていうのは……。
ところで、面白いのは、山頂に赤いポストが立っていること。一種の映えスポットとして人気です。「風景印ポスト」というもので、このポストに郵便物を投函すると、御所郵便局の風景印(風景を図案化した消印)を押してもらえるのだとか。

葛城山と櫛羅の滝とロープウェイが描かれている、ちょっとレトロな図柄だそうです。ハガキを持って来ればよかった!