ソトラバ

一面の茶畑に癒されるのどかな山道の先にあるのは? 役小角が見守るスリリングな岩場で修行

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夏も近づく八十八夜。新茶の季節に、京都府南部の茶畑があるエリアへ行ってきました。奈良県との府県境に近い南山城の「和束町(わづかちょう)」は、古くから日本茶の生産が盛んで、桃源郷ならぬ「茶源郷」と呼ばれるお茶の町。JR関西本線加茂駅からバスに乗るのですが、改札を出たら、茶娘「茶茶ちゃん」がお出迎え! 「ちゃちゃちゃん!」これは舌嚙みそう。

茶茶ちゃん

非常に本数の少ないバスに揺られて、「原山」という地区へ向かいます。茶畑以外に何もなさそうな地域なのですが、10名足らずのバスの乗客の8割はインバウンド客。どこへ行くのかな……? 不思議に思いながら、終点まで乗っていたのは自分だけ。茶畑の中に続く道を登ります。

茶畑1

一面に茶畑が広がる独特の景観

抹茶をまぶしたロールケーキみたいな茶畑を眺めながら、集落の中の坂道を登っていきます。日陰がないので、初夏とは言え日差しがきつくて暑かったです。日本茶の原料である「チャノキ」は、中国をはじめ東アジア一帯に分布するツバキ科の常緑樹。日本には、7世紀~9世紀頃、遣隋使や遣唐使が持ち帰ったとされています。

チャの葉

鎌倉時代、この近くにある海住山寺の高僧・慈心上人(じしんしょうにん)が、 日本で最初に茶園を作ったとされる京都栂ノ尾高山寺の明恵上人(めいけいしょうにん)から茶の種子を譲り受け、 鷲峰山(じゅうぼうやま)の山麓で栽培を始めたのが和束茶の始まりだそう。

日本茶と言ってもいろんな種類があるのですが、この地区では、黒い覆いをかぶせた「被覆栽培」という方法で育てている茶農家さんが目立ちます。

被覆栽培

摘み取る前の一定期間、黒い寒冷紗(かんれいしゃ)をかぶせることで、直射日光によって茶葉に含まれているアミノ酸の一種・テアニンがカテキンに変化するのを抑える効果があり、お茶特有の渋みや苦みではなく、旨味と甘みが強い味わいになるのだとか。

また、日光を遮られたチャノキが、光合成をするために葉緑素を増やすので、緑色が濃い、鮮やかな色合いの葉になるそうです。高級な玉露や抹茶などになるらしい。目がよくなりそうな? 色合いを眺めながら、のどかな茶畑の中の道を山上へ向かって進みます。登りはそれなりにきつかったです。

茶畑の中の道標

役小角が開いた修験道の行場がある古刹

茶畑ゾーンを過ぎて、森の中に伸びる登山道を登り詰めると、いよいよ目指す「鷲峰山金胎寺(じゅうぶさんこんたいじ)」です。

金胎寺山門

天武天皇の御代に役小角が開いたとされ、奈良時代には平城京の鬼門を守る寺として聖武天皇の勅願寺になりました。その後、山内に58もの坊舎が建ち並ぶほど繁栄したそうですが、建武の中興で後醍醐天皇が笠置山へ向かうときこの地を通り、追手の鎌倉幕府軍によって寺は焼き討ちにされてしまったとか。

境内

平日は訪れる人もあまりないようで、ひっそりと静まり返った境内に枝垂桜が咲いていました。寺務所前に設置してある入山者名簿に名前と入山時刻を記入し、拝観料500円をお支払いして、本堂で無事を祈願してから行場へ向かいます。もしも帰ってこなかったら探しに来てくれるのかなぁ……? 時刻を記入するって、そういうコトだよなぁ?

境内から「行場」へ続くなだらかな小道を進むこと約30分。道の脇で、役行者さまが修行へ向かう者たちを迎えてくださっていました。

迎え行者