六甲山には変わった地名がたくさんあります。今までにも〝ヘンな地名コレクション〟的なチョイスで、「ごろごろ岳」や「小天狗山」などあちこち探索しています。今回もまた、不思議な地名のところを訪ねてみました。登山用語に「蟻の戸渡り」という言葉があります。左右がスッパリと切れ落ちたような、狭く険しい痩せ尾根を指しています。
幅が狭いので、登山者は一列で歩くしかないのですが、その様子を遠目に見ると、まるでアリが行列をなして歩いているように見えることに由来しているとか。有名なのは、信州・戸隠山の「蟻の戸渡り(塔渡り)」。本家のやつは、ガチのナイフリッジで、うっかり落ちたらほぼほぼ死ぬやつです。

あのヒーローを思い出す色合い
さて、それでは我がローカルの「戸渡り」がどんな感じなのか、探索に行ってみましょう。暑いので、六甲ケーブルの下駅まで飛び道具(バス)を利用して、標高240mからスタートする作戦。下界より少しは涼しいです。しばらく車道を歩いて行くと、青空にビビッドな赤が映える、とてもきれいなループ橋が見えてきます。

六甲山の南側、神戸市灘区と、六甲山地の北側にある三田市を結ぶ「県道95号灘三田線」にかかる橋なのですが、昭和のヒーローで、地球を守るために怪獣と戦ってた、あのウルトラマンっぽい色だと思いませんか?
この橋の色とは直接関係ないのですが、「ウルトラセブン」の14話・15話『ウルトラ警備隊西へ』は神戸周辺でロケが行われました。ウルトラ警備隊が乗った「ポインター号」が、「六甲山防衛センター」へ向かうため駆け抜けるというシーンのロケが行われたのがこのあたり。途中で敵の襲撃に遭いながらも、「シークレットハイウェイルート9」を通って六甲山へ向かうのです。
そのシーンで背後に写るこの橋が、ウルトラマンを思わせる色なので、地元民にはとくに印象深かったのだとか(当時はもっと鮮やかだったそうです)。この橋の下をくぐるとすぐ、表六甲ドライブウェイの新道と旧道の交差点へ着きます。そこにいたのは……。

ヤギをめざしているのに、ヒツジに出迎えられるとは。六甲山の上に、ヒツジがたくさんいる「六甲山牧場」があるため、ココにこんなモニュメントが置かれているようです。
車道歩きから踏み跡も薄いマイナールートへ突入
しばらくはドライブウェイの旧道を登って行くのですが、多くのクルマは新道の方を走るので、車道歩きと言ってもとくに怖い思いをするわけでもなく、道路の脇に咲く六甲山名物のアジサイを楽しみながら登山口となるポイントを目指します。

最初のヘアピンカーブで、ガードレールの切れ目から車道を離れ、沢沿いに伸びるうっすらとした踏み跡を辿っていきます。

左岸側から、沢の流れを渡渉して、尾根の末端へ取り付きます。この日は、前日に大雨が降ったので、増水していて渡れなかったらどうしよう、とドキドキしていたのですが、意外なくらい平水でした。
しかし、取り付いた尾根はいきなりの急登。岩場も点在し、手足をフル活用して登る激登りパートです。

それでも、ひとがんばりすると、背後に眺望が開けてきて、疲れも吹き飛びます。
