登山の世界には、街中で過ごしているときとは違う独自のルールやマナーがいろいろあります。ビギナーさんのなかには「なんでそうなの?」という疑問を持つ人も少なくないでしょう。そんな〝山のルールやマナー〟に関して、素朴な疑問なども含めて解説します今回は、「登山前後の公共空間でのマナー」について。
「登山中は周囲への配慮・注意を怠らない」のは、お互いの安全のためであり、大切な自然環境を傷つけないためにも当然のことなのですが、じつは「周囲への配慮」が必要なのは、家を出たときから始まっています。

電車の中で後ろの人に迷惑かけてませんか?
たとえば……、両手がフリーになることに加えて、少々重い荷物でも楽に持てることから、リュックサックの利便性が周知されてきて、登山をやらない人でも、ふだんのお出かけや通勤などでリュックサックを利用するケースは増えていますね。
筆者がいつも利用する阪急電車では、「リュックサックは前にかかえるか、網棚などに……」という車内アナウンスを流しています。それほどリュック族が多いということでしょうか。

限られたスペースでは周囲への配慮を!
アナウンス効果もあってか、通勤時間帯に車内を見ていると、ほとんどの人がリュックは前に持っておられます。なのに休日の電車で登山に行くと思しき人たちのなかには、なぜか背負ったままの人が……。タウン用と違ってそれ、デカいんですけど……。
通勤ラッシュ時ほどではなくても、周りにはほかの乗客がたくさんいます。背中に目はついていないので、自分の荷物が後ろの人に対してどうなっているのか確認できません。大型のバックパックなど、前にかかえるのが難しければ、背中から降ろして、ほかの人の邪魔にならないように足元に置くとか、自分の目で見える状態で管理するようにしてください。
大きなバックパックは、大きいというだけで「なんとなく迷惑」という目でみられがちなもの。置き方にも配慮して乗り降りの邪魔にならないように気を配り、間違っても座席を占拠したりしないようにしましょう。

それ、ほとんど凶器ですけど?
そこそこ混雑している車内で、バックパックを背中に背負ったままの登山者。それどころか、サイドポケットにトレッキングポールを刺したまま……。はっきり言って危ないし、そんな人が近くにいたらコワいです。
年配の女性ハイカーさんで、先端にかぶせる布製のカバーを手作りしている人もいますが、カバーをかけたら外付け上向きがOKなわけではありません。専用の収納ケース並みに、きちんと突起部分を覆えるものならべつですが……。
あるとき、車内で剥き出しのトレッキングポールをサイドポケットに突っ込んでるハイカーさんを見かけたので、「危ないから、中にしまった方がいいですよ」ってお声をかけたところ、「入らないんだからしょうがないじゃない!」と逆襲されました。せめて手提げに入れて手に持つとかできませんか……?
トレッキングポールは折りたたんでバックパックの中に収納するのが基本です。たためないタイプのものなら、せめて手に持って、先端が上を向かないように配慮してください。当然ですがストックの石突に装着するラバーキャップはきちんとつけておいてくださいね。

自分たちだけが気づいていない電車の中での迷惑行為
山帰りの人が多く乗っている、とある鉄道の車内のことです。下山してきて、どこかでビールの一杯も飲んだのでしょうか、ちょっとテンションの高い登山者グループがワイワイとおしゃべりをしていました。山行がうまくいって気分もよかったのか、その日の山の話題で盛り上がっていました。
でも、まわりの一般客はちょっと迷惑そう。そのとき筆者は、一人だったので両方をさりげなく観察していたのですが、ちらっと目線を送りながら小声で「うるさいよね、あの人たち」と眉をひそめている方たちもいました。
トラブルに発展することはなかったのでよかったのですが、迷惑をかけていることは確かです。気づいてないのは当事者だけ。筆者もかつて、大人数のグループでよく山に行っていたのですが、そのときは自分もあんな感じだったかも。昔のこととは言えちょっと恥ずかしくなりました。どうしても仲間といっしょだと、まわりへの配慮を忘れがち。そして、山の話をしていると、ついつい盛り上がって大声になりがち。気を付けたいものです(自省をこめて)。