アサギマダラは、南西諸島から北海道の南部にかけて見られる、タテハチョウ科に属する大型の蝶です。その優雅でふわふわとした飛翔からは想像できないほど長距離を移動することから、「旅する蝶」として多くの人々を魅了しています。特に秋、花に群れ飛ぶ姿は、見る者を幻想的な世界へと誘います。この記事では、そんなアサギマダラの驚くべき生態についてご紹介します。
驚きの生態その1【毒を利用した捕食者からの防御】
アサギマダラは、体内に毒を溜め込むことで天敵から身を守ります。幼虫は、毒性の強いアルカロイドを含むキョウチクトウ科(旧ガガイモ科)の植物(キジョラン(下の写真)、カモメヅル、イケマ、サクラランなど)を食べて育ち、毒を体内に蓄積します。

オスは、ヒヨドリバナや写真のフジバカマといった植物の蜜を吸うことで、ピロリジジンアルカロイド(PA)を体内に取り込み、性フェロモンとして利用します。

幼虫、蛹、成虫ともに鮮やかな色をしていますが、これは「警告色」です。毒を持っていることをアピールし、捕食者に「まずいから食べないで」と知らせています。しかし、毒を溜め込んでも、群れで飛ぶ場所では残念ながら鳥やカマキリなどに捕食されてしまうことがあります。
驚きの生態その2【長距離飛行の秘密】
アサギマダラは、その小さな体で長距離移動を可能にする、優れた飛行能力を持っています。飛行速度は時速10~55kmに達すると予想され、華奢な見た目からは想像もつかない速さです。
効率的に風を捉える翅の形状を模して、扇風機が開発された例もあります。翅の特徴としては、撥水性が高いことも挙げられます。長距離移動する蝶は、翅の撥水性が高いことがわかっており、アサギマダラの翅も例外ではなく、翅の撥水性が高いことがわかっています。

また、アサギマダラの驚くべき能力のひとつに、上昇気流に乗って滑空する技術が挙げられます。アサギマダラは上昇気流を巧みに利用し、ほとんど羽ばたかずに高くまで舞い上がることができます。これにより、体力を温存しながら長距離を効率よく移動することが可能になります。まるでパラグライダーのように、風を味方につけることで、その小さな体で数千キロもの旅を成し遂げているのです。