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猛暑が終わってこれから活発化? 近年被害が広がるマダニの危険性とその対処方法とは

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温暖な時期のアウトドア活動での困りごとのひとつが虫刺され。虫よけスプレーや蚊取り線香などの対策グッズはいろいろあるけど、それでも刺されてしまうこともありますね。

蚊くらいなら、しばらくかゆいのをがまんしていれば治まりますが、刺されるとやっかいなコトになってしまう吸血鬼もいろいろ。今回は、近年生息エリアが拡大し被害が急増している「マダニ」について解説します。

致死率最大30%の感染症が過去最多ペースで増加

マダニが媒介して感染する「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)の患者が、過去最大レベルの勢いで増加しています。SFTSは、2011年に発見されたウィルスで、感染すると発熱・下痢・嘔吐などの症状が現れます。日本では2013年に感染症法における4類感染症、全数把握対象疾患に指定されています。

被害の届け出があった地域は宮崎県が最多で、九州、四国、中国地方が多く、近畿、東海、北陸にも拡大しつつあります。JIHS(国立健康危機管理研究機構)が2025年9月2日に発表した速報値によると、今年の全国の感染者数は142人。すでに、これまで最多だった2023年の134人を上回っている状況です。

しかも、エリアが北海道や関東に広がっている点に注意が必要。これまでは、被害は西日本に集中しており、届け出が関東であっても、感染したのは西日本であったそうなのですが、今年は北海道や関東でマダニに咬まれて発症する事例が出ています。マダニの活動エリアが全国的に拡大しているのではないでしょうか。

日本で生息している約50種のマダニのうち、SFTSを媒介するのは、フタトゲチマダニなど5、6種。いずれも南方系なので、これまで被害例は西日本に集中していたのですが、近年は北海道ですら沖縄並みの気温の日もあります。もはやどこの地域であろうと油断はできない事態になってきていると思います。

マダニに咬まれたらどうなるのか?

マダニは蚊などと異なり、一瞬で吸血して離れていくわけではありません。1週間~10日くらいかけて、じっくりチューチューするタイプ。その間、脱落すると困るので(?)、口器をセメント様物質で皮膚に固着させるそうです。しかも、マダニの唾液には麻酔のような成分が含まれているため、咬まれてもほとんどの人は気づきません。

知人がマダニに咬まれたときの事例ですが、ふと脇腹に違和感があって、触ってみたら「あれ? イボができてる?」。そこで彼女は、家族に「なんか、イボみたいなものができてるみたいやねんけど何やろ?」と見せたところ、

「イボっていうか……足が生えてるで」

「えええっ?」

というやりとりがあったとか。怖いですよね。ブチっとひきはがして、そのままとくに問題はなかったそう。でも、気づかないどころか、たいへんなコトになる人もいます。何を隠そう筆者は虫アレルギー。蚊以外の虫に刺されるとだいたいえらいコトになるのですが、初めてマダニに咬まれたときは悲惨でした。

それは、数年前の6月末、六甲山でのことです。草原の山として知られる「東お多福山」という山に登りました。

東お多福山

ちょっとササヤブが茂っているところを歩いたのですが、その日はとくに虫よけ対策もしてなかったのですが、虫刺されの被害はありませんでした。ところが、翌日の昼前になって、急に皮膚がかゆくなってきて、見てみたらポチっと小さな発赤が……。

「あれ?なにかの拍子で血豆ができたのかな?」と思って、よーく見てみたら……。

マダニ

あららー。足が生えてるじゃないか。速攻でググってみたところ、どうやら「マダニ」というやつみたい。取ろうと思って引っ張ったけど、取れない。

さらに調べてみると……。

「無理に引っこ抜くと口器が皮膚の中に残って、しかも抜くときにマダニの体液が逆流して感染症になる可能性がある」という恐ろしいことが書いてありました。ひょぇぇ。引っこ抜こうとしちゃったじゃないか。
すぐに近所の皮膚科を検索し、一番早く診てもらえる医院を訪ねました。

医師は、パッと見て「マダニですね。除去しましょう」と、ピンセットみたいな器具でブチっと取ってくれました。1時間くらい待たされたわりに、診察+処置3分、みたいな拍子抜け。でも、専門家が取ってくれたからこれで安心、と思っていたのに、その後症状がどんどんひどくなって、両掌で覆いきれないくらいの広い範囲が紫色に変色して、猛烈なかゆみが続きました。

でも、マダニは取ってもらったし、もしかしたら自分で抜こうとしたときに、マダニの体液が逆流して、アレルギー反応が起きてしまったんだろうなぁ、などと思ってガマンしてました。

2カ月ほど経っても状況は変わらず猛烈にかゆいまま。たまたま別の山に行った帰りに温泉へ立ち寄り、同行者が看護師さんだったので、「まだこんな状態やねん」と見せたところ、

「これはちょっとアカンやつじゃないかな」と、勤務先の病院の医師に患部の写真を送って相談してくれました。するとその先生から「その人、今すぐ連れてきなさい」との指示が出て、急遽診ていただけることに。

その先生の診立てでは、「たぶん皮膚の中にマダニの組織片が残っているのでしょう」とのことで、除去手術をしてもらうことになりました。革細工の穴あけパンチみたいな器具で(怖)、直径4mmの肉片を切り取り、ぽっかり空いた傷口を縫合手術。
結局、最初にかかった医院では取り切れていなかったために、炎症が続いたみたいです。そんなコトになるケースは非常に稀だと思いますが(アレルギーじゃない人は気づきもしない)、なかなかたいへんな目に遭いました。