温暖な時期のアウトドア活動での困りごとのひとつが虫刺され。虫よけスプレーや蚊取り線香などの対策グッズはいろいろあるけど、それでも刺されてしまうこともありますね。
蚊くらいなら、しばらく痒いのをがまんしていれば治まりますが、刺されるとやっかいなコトになってしまう吸血鬼もいろいろ。今回は、虫ではなくて、もっと不気味で、かつ謎に包まれた生き物、「ヤマビル」について取り上げます。
全員血まみれの惨事!
滋賀県のとある沢に行ったときです。暑い夏は沢に限る! と、涼しい沢歩きを楽しみました。

源頭までツメ上がり、一般ルートを歩いて下山していたとき。前の人のシャツに、なんだかへんなシミがあるのが見えました。
「何かついてるよ?」と近づいたら、どうも血のように見えます。
「どうしたん? なんかケガしてる?」
「え?」
「あ! あんたもやで! 血ぃついてるわ!」
なんと、みんなあちこち流血してます。一同プチパニック!
「あー。あいつや! あの吸血鬼め!」
……そう、ヤマビルに吸血されていたんです。
ぷっくりと膨らんだヤマビルが脇腹にぶらさがっていた人、すでに脱落して、じくじくと流血している人… 帰り道、血まみれの服のまま電車に乗ったら通報されかねない事態です。
ヤマビルは、知らない間に皮膚にくいついて、元の体重の10倍くらいの血液を吸います。
吸盤状の部分で皮膚にくっついて、逆Y字状をした口にある顎歯で皮膚を切り裂き、染み出てきた血を吸うのですが、その際、唾液腺からモルヒネのような物質を注入するため、吸われている人はまったく痛みを感じません。
しかも、「ヒルジン」という抗血液凝固物質も含まれていて、吸血を終えたあとも、だらだらと流血が続くことになります。
筆者自身は、用心深いので、まともに吸血されたことはないのですが、下山後に露天風呂に入っているとき、腕を這っている小さなヒルに気づいて、弾き飛ばしたことがあります。
吸血体勢に入ろうとした瞬間だったのか、くっついていた箇所から糸のように血が流れ出して、びっくりしました。
あわててその部分を絞り出すようにしたので、流血はわりとすぐに止まりましたが、その後2週間くらい、むず痒い状態が続きました。
ヤマビルが生息しているのはどんなところ?
これまでの経験では、特定の「沢」か、じめっとした「森」によくいる気がします。

関西の登山者の間では、ずっと昔から、三重県と滋賀県にまたがる鈴鹿の山々にはヒルが多い、と言うのは有名な話。滋賀県でも、琵琶湖の反対側の比良山地では、特定の沢にしかいない、と言われていました。
しかし、近年は生息域が拡大してきていて、北海道と一部の県を除くと、ほぼ全国に分布しているという調査結果もあります。
ふだん、吸血しているのはシカやイノシシなどの野生動物なので、それらがいる環境ではヤマビルも生息している可能性があります。いままでいなかったからと言って、油断はできません。
ヤマビルに注意が必要な季節はいつ?
一昔前までは、6月頃から9月頃が活動期と言われていましたが、ほかの吸血生物と同様、活動期は拡大しているようです。神奈川県での調査によると、仔ビル誕生のピークは9月~10月だとか。休眠に入る真冬以外は警戒した方がいいと思います。
吸血されないためにはどうすればいい?
ヤマビルの大きさは、誕生したばかりの幼ビルで体長5~6mm。もう少し大きい個体でも、1cmちょっと。落葉のなかにいるとなかなか見つけにくい色をしています。
対策として、「皮膚を露出しないこと」と言われていますが、小さくてスリムな身体なので、ほんのわずかのすき間からでも侵入してきます。ニット靴下の網目のすき間から侵入しようとしているのを見たことがあります。

ハイカットシューズにゲイターを装着していたとしても、すき間から這い上ってくるので、完全に防ぐことはできません。
靴やパンツの裾などの、足元にヤマビル用の忌避剤を噴霧しておくのが一番かと思います。

昔から「塩水が効く」と言われていますが、実際に効果がみられるのは塩分濃度20%以上だとか。ヤマビルに直接塩を振りかけると、死んでしまうそうで、ヤマビル対策で塩を持ち歩いている人もいます。

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