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驚異の適応力と在来動物への影響は? クリハラリスの生態とは

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ニホンリスに迫る危機

世界中で日本の本州と四国にのみ分布する固有種であるニホンリスは、クリハラリスからの影響が特に心配されています。

なぜなら、ニホンリスにとって生息の決め手となるオニグルミやアカマツ、そして渋みの少ないスダジイのドングリといった餌は、クリハラリスが侵入している本州の低地から丘陵地の林でよく見られ、そこでは餌の争奪戦が起こる可能性があるからです。

そうなると体格が大きく、密度が高いクリハラリスが有利になります。

ニホンリス/クルミ

餌を食べられないことで「ニホンリスの数は減るのではないか」という懸念が囁かれているのです。

その他の在来種への影響は?

また、ニホンリスだけでなく、他のリス類への影響も心配です。日本にいるリス類は6種で、どれも日本の固有種であり希少種です。

それらの動物は木の幹にできる穴である樹洞を毎日の寝場所や子育ての場所にします。

樹洞は時々変えますが、樹洞が少ないと子育てしにくい環境になります。クリハラリスが増えると「日本在来のリス類と巣穴である樹洞を奪い合う可能や、その樹洞を経由して感染症や寄生虫がうつることが懸念される」そうです。

ムササビ/樹洞

さらに、サンコウチョウや、メジロなどの卵を食べてしまうため、それらの野鳥の生息数が減っているのではないかと疑われる地域もあります。

メジロ/引き

これらの野生動物たちの増減には人の生活などの様々な影響もあり、一概にクリハラリスのせいだけとは言えない部分がありそうです。でも、クリハラリスも意外と多くの生物に影響を及ぼす可能性があります。

【取材協力】
国立研究開発法人森林総合研究所 多摩森林科学園 研究専門員

田村 典子(たむら のりこ)さん

【プロフィール】
1960年生まれ。東京都立大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。専門は動物生態学。著書に『日本の哺乳類学① 小型哺乳類』(共著、東京大学出版会、2008年)、『リスの生態学』(東京大学出版会、2011年)、『日本の外来哺乳類』(共著、東京大学出版会、2011年)、『タネまく動物』(共著、文一総合出版、2024年)などがある。行政関係者、学校、NPOなどのメンバーが集まって、広く市民からもクリハラリスの生息情報を収集・共有化し、効果的な捕獲対策につなげるの「クリハラリス情報ネット」代表。

■国立研究開発法人森林総合研究所 多摩森林科学園
https://www.ffpri.go.jp/tmk/

■クリハラリス情報ネット
https://sakaigawa.eco.coocan.jp/kurihara/kuriharalis_TP.html

■『となりのクリハラリス』(2025年8月刊/東京大学出版会)
https://www.utp.or.jp/book/b10136650.html