まわりに迷惑な騒音問題以外にもビギナーさんがやりがちなNG案件はたくさん。そこで、今回もビギナーさんがうっかりやってしまいがちなNG案件をご紹介します。山小屋デビュー前にしっかり予習しておきましょう。
山小屋で水を流しっぱなし
夏山シーズン真っ盛りのとある山小屋で見かけた光景。朝起きたばかりなのか、ぼんやりとした表情の男性が歯ブラシを口に突っ込んで歯磨き中でした。ふと見ると、蛇口から水を流しっぱなし……。
「だ、ダメですよっ! み、水は貴重なんですっ…!」
「へ?」っていう感じのお顔をされたのですが、稜線上にある小屋では、水はものすごく貴重なんです。おうちでいつも、そうやって水を流しっぱなしで歯磨きをされてるんだと思いますけど、ココではNGです!
小屋の立地にもよるのですが、基本的に水は使い放題ではありません。飲み水ですら、確保が大変な小屋もあります。そして、歯磨き粉や洗顔料などの使用も基本的にはNGです。下水道がないので、排水はそのまま流さざるを得ないからです。

水の使い方が普段の生活とは全く違う
水資源に恵まれた日本。「湯水のごとく」という言い回しがあることでもわかるように、水に関しては、日ごろから無造作に使っている人が多いように思います。トイレの音消しで何度も流す人、蛇口全開で洗い物をする人、お風呂で何杯も何杯もお湯をかぶっている人……。
いずれも、珍しくもないし、べつにそれで注意されることもありません。水道代は確かにかかるのですが、ほかの資源と比べて、本気で節約を心がけている人は少数派のような印象があります。でも、それって世界的に見ると、決して普遍的なことではないし、日本であっても、山の上では事情が違います。
沢沿いにある小屋や、豊富に湧水が得られる立地の小屋では、水には困らないというところもあります。夏山でよくみかける、大きな桶に流水を流し込んで飲み物やトマトを冷やしながら売っているような光景。そういうところでは水はほぼ使い放題です。顔を洗って、タオルも洗って、なんなら頭にぶっかけてもOKかも。
でも、稜線上にある山小屋の場合はそうはいきません。雪渓から雪解け水を引いてきたり、ずっと下から沢水をポンプアップしたり。それもなければ雨水に頼らざるを得ないところも少なくありません。そういうところでは、水は本当に貴重なのです。

夏山シーズンに訪れた頂上に近い山小屋では、食器がすべて使い捨てでした。使い終わった紙食器はゴミとなるので、ヘリで下界へ降ろさなければなりません。それでもここでは、水洗いするより合理的なのかもしれません。