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「槍」と「穂高」をいっぺんに踏破? 六甲山にはほかでは見かけない謎地名がたくさん

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六甲山地には、ほかの山ではちょっとみかけないような不思議な地名がたくさんあります。これまでにも、「小天狗山」「ごろごろ岳」「仙人窟」「山羊の戸渡」などを訪れてきたのですが、今回はゴージャスに「槍」と「穂高」! どうして関西の低山に槍や穂高があるのか?

起点はさながら高原リゾート「穂高湖」

摩耶山からほど近い、「杣谷峠」のすぐ北側にある湖が「穂高湖」。湖畔にはウッドデッキが設置され、大きなガラス窓から湖が眺められるお洒落なカフェもあります。

夏の休日ともなれば、色とりどりのカヌーが浮かべられ、まるで高原のリゾート地のようなたたずまいになります。その穂高湖の対岸に見える、きれいな形のとんがりピークが「シェール槍」。標高は648m。とは言え、湖畔からの登り口の標高が590mなので、標高差50mほどのかわいらしいミニピークです。

でも、姿もカッコいいし、湖畔で眺めていると、「あれに登ってみたい!」という気持ちになるもの。それでは行ってみることにしましょう。

湖畔の遊歩道をぐるっと半周して、湖の北側へ回ります。以前はこのような看板がなかったので、登り口がわかりにくくて、知る人ぞ知るマイナーピークだったのですが、今はわかりやすい看板がつけられて、誰でも行きやすくなりました。

いきなりちょっとした岩場から始まる登山道。距離はわずかだし、標高差も50m弱なので、あっという間ではあるのですが、ピークの直下ではけっこうな傾斜の岩場が立ちはだかります。

そこをクリアすると、背後にはさっきまでくつろいでいた穂高湖の湖面が見えています。

プチクライミングで絶景の山頂へ

やや傾斜の強い岩場を2カ所ほどこなすと、あっという間に山頂。5、6人もいればいっぱいになる感じの狭いピークです。西側の眺望が開けていて、六甲山地の西側一帯から播州平野方面が見えています。空気が澄んでいれば播磨灘の青い海も見えるはず。

頂上からの景色を堪能したら、先ほどの基部までくだって、次は「新穂高」を目指します。

穂高湖の下流側の川に沿った道が、「シェール道」と呼ばれています。六甲山にはカタカナ地名が多いのですが、明治に入って開国したのち、神戸にやってきた外国人に因むものがけっこうあります。このシェール道もそのひとつ。

明治時代に神戸で暮らしたドイツ人のシェールさんが好んで歩いた道だということから名づけられたのだとか。そのシェール道の近くにあるとんがったピークが「シェール槍」と呼ばれるようになったようです。

道なき道をたどって「新穂高」へ

シェール道から少し南側へ登り返し、「徳川道」へと入っていきます。この道は、幕末に神戸の港を外国船に対して開港するにあたり、入港してきた部隊と、参勤交代で西国街道を通る大名行列とのトラブルを避けるために作られた道。

港がある海辺を大きく迂回するように、山の中に作られたバイパスです。正式名称は「西国往還付替道」、通称「徳川道」と呼ばれています。

約3ヵ月の突貫工事で超絶急いで作らせたわりに、この道が完成したことが公示されていなかったため、危惧した通りに「神戸事件」が起きてしまったという切ない歴史を持っています。結局、大名行列は一度もこの道を通っていませんが、現在ではメジャーなハイキング道として親しまれています。

小さな峠付近から新穂高への道がわかれるのですが、あまり通る人もいないのか、踏み跡は非常に不明瞭。

うっすらとした踏み跡を辿って奥へ分け入っても、ヤブに覆われてどこが道やらわからない。

クソヤブ漕ぎとルートファインディングに苦心しながら、ようやくたどりついた山頂は……。

木々が生い茂って、まったく眺望なし! 山頂感ゼロ! 誰もいない!

標高548m、奇しくもシェール槍とほぼ同じです。「(シェール)槍と(新)穂高に行ってきた!」と言いたいだけの、自己満足系登頂でした。しかも、下る道もわかりにくい。

もうひとつあるピーク、西峰(609m)も眺望はまったくありませんでした。

ひたすらヤブと戦い、道なき道を探りながら、徳川道に再び復帰するところまで。一応、東から西へ、無名のピークも入れると3座の〝縦走登山〟ですけどね。

穂高湖、シェール槍、新穂高、と、なかなかゴージャスな地名を巡る山歩きではありますが、途中ほとんど誰にも会わない超マイナーエリアでした。同じ摩耶山でも、観光客でいっぱいの掬星台とは全くの別世界。