六甲最高峰の少し東側に「石宝殿」という古くから信仰されてきた祠があります。小高いピークの上にあり、芦屋川、住吉川、夙川(しゅくがわ)、逆瀬川、仁川、船坂川など多くの川の水源であり、水を司る神様として敬われてきました。ここへ、六甲山北麓の船坂という集落を起点に登ってみたいと思います。
有馬街道が通る古代からの要衝「船坂」
六甲山地北面、標高約400mに位置する船坂。日本三名泉、三古湯としても知られる有馬温泉から直線距離で3kmほど東にあり、都から有馬温泉へ向かう「湯山街道(有馬街道)」が通るため、古くから人が往来した地です。
船坂バス停でバスを降りると、すぐ裏手で放し飼いにされているニワトリの卵や、収穫したての野菜などを入れたロッカー形式の無人販売所がありました。

骨董品級の古いコインロッカーを活用しているもので、中に入っている商品のお値段分のコインを入れると扉が開く仕組みです。
すぐそこで走り回っているニワトリが生んだばかりの新鮮卵、買いたかったんだけど、まさか卵を持って歩くわけにもいかないし。

船坂川にかかる橋を渡って、上流方面へ進みます。この道は「船坂谷道」と呼ばれて、古くから通られていたようです。
その先は崩壊した廃道?
舗装された車道を歩くこと約10分。もう一度川を渡るあたりから、日帰りキャンプに訪れる人が多いエリアになります。川沿いにちょっとした広場のような場所が何か所かあり、タープを張ったりしているのをよく見かけます。本流に沿って進んでいくと、車道が崩壊した箇所が出てきました。

上流にある大規模堰堤の工事車両のための道だったのか、部分的にコンクリート舗装された道があったのですが、川を渡る部分が大きく崩壊して渡れません。少し上流側の流れが浅いところを渡渉することに。

しばらく、未舗装の砂利道が続いて、何の跡かわからない廃墟を横目に見ながら進むと、巨大な堰堤が姿を現します。

7年ほど前に竣工した比較的新しい堰堤。流路にスリットが入ったタイプで、土石流が起きた時に巨大な岩や大木を止める役目を持っています。

堰堤の右岸側にしっかりとした巻き道がつけてあるのですが、平水のときならスリットの間を通ることもできます。巨大なジャングルジムっぽくて楽しそう。
触れると老いる謎の大石「老ケ石」
行く手に、不思議な雰囲気が漂う岩が見えてきました。家のような形をした、のっぺりとした巨岩です。上に登れそうな感じなんですが、右側に何か祀られているっぽい。
説明書きによると、「大石(老ケ石)」と呼ばれている石で、横が15m、厚さ5m、高さ7mほどもあるとか。実際には、地表に出ているのはほんの1/3ほどだとか、かなりの巨岩です。
古来、触れてはいけない神聖な石だとされて、石材として切り出そうとしたら、ノミを入れた部分から鮮血がほとばしり出て、石工は死んでしまった、というような話がたくさん伝わっているそう。また、別説では、触れると早く老けると言われているとか。登らなくてよかった。

その先は、少しヤブが深くなってきて、歩く人が少ないエリアになってきた感じがします。起点から40分ほど歩いたあたりで、涼しげな滝音が聞こえてきました。

キレイな末広がりに水しぶきが落ちている「川上の滝」です。マイナスイオンをたっぷり浴びながら小休止。滝の音には癒しの力があるような気がします。
ルートファインディング力が試されるマイナーエリアへ
滝までは、一応は歩けるように整備されていたのですが、その先は急に踏み跡がうっすらした感じに。近年はまったく整備をしていないみたい。ちょっとした小滝があったり、巻きが必要なところがあったりで、慎重にルートファインディングしながら進みます。

いろんなキノコがあちこちに生えていたのですが、木の根っこから出てきて不思議な形になってしまったタマゴタケが可愛い。

いろとりどりのキノコがわらわらとたくさん生えていると、かわいいんだけど、ちょっと不気味ですよね。

キノコ探しに熱中しているうちに、ルートがどんどん怪しくなってきました。なんとなく踏み跡っぽいところを探りながら歩いていると、古びた看板が落ちています。文字が消えかけているけど、道標かな?

えーっと。迂回しろって言われても……?(困惑)。ツメが近づくにつれて、ルートはますます複雑になってきます。堰堤を越えたり、尾根をまたいで隣の支沢に入ったり。残置ロープがぶらさがっている急崖もあります。

そうこうするうちに、またしてもキノコを発見。

これ、食菌のキクラゲですよね。ちょっと摘んで帰る度胸はないんですが、モフモフした感じが可愛い。そして、だんだん急になってくる斜面を気合で頑張ると、車道に飛び出しました。


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