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辛い、渋い、臭い! 不快さを身につけたタネの進化と動物達の子孫を残すための戦略とは

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秋の森を歩くと、様々な木の実(果実)を目にします。実は子孫を残すために作られるものですが、効率よく子孫を残すために様々な戦略で進化してきました。

動物が木の実を食べる行為は、植物側から見ると、「運んでもらうための投資」と「子孫(タネ)を失う食害」の二つの側面を持ちます。理想的なのは木の実の果肉だけを食べ、タネを傷つけずに運んでくれることですが、タネそのものを食べられることも多いです。

木の実やタネは成長を始めるまでのエネルギー源として、デンプン、脂肪、タンパク質などを蓄えています。これらは動物にとっては重要な栄養源になります。

そのため、食べられたくない植物と、食べたい動物たちの間で激しい攻防が起こります。

今回は、その攻防の手法として「辛い」「渋い」「臭い」といった”不快さ”を身につけることで効率的にタネを散布したり、食べ尽くされることを回避しようとして進化した植物をご紹介します。

刺激的な成分で捕食者を選別【辛い】

様々な料理に使用されるトウガラシは、その辛み成分であるカプサイシンで哺乳類を強く忌避します。というのも哺乳類は鋭い歯でタネを噛み砕いてしまい、タネの散布者としては失格だからです。

一方、カプサイシンは鳥類にはほとんど作用しません。鳥類は歯を持たず、果実を丸呑みしてタネを傷つけずに遠くまで運び、排泄してくれます。

トウガラシは「辛い」という不快成分でタネを噛み砕く動物には食べられないようにし、理想的な散布者である鳥のみを誘引するという戦略を実現しています。

強い渋みで摂食を阻害する【渋い】

不快な味覚のひとつはドングリなどに含まれるタンニンによる「渋み」です。タンニンは動物が食べると口の中でタンパク質と結合し、滑らかさが失われザラザラとした不快な「渋み」を感じさせます。さらにタンニンは、食べすぎると消化阻害や臓器損傷などが起こります。

そのような健康被害を避けるためか、クマやイノシシはタンニンと結合する成分(PRPs:プロリンリッチタンパク質)を唾液中に分泌します。

この成分はタンニンを消化管に到達する前に中和し、有害作用を低下させます。しかもドングリを食べる時期だけ唾液中のこの成分が増えます。

余談ですが、筆者の人生において一番渋いと思ったのが渋柿ですが、その渋柿がおおよそ約1~2%のタンニン含有量で口中がざらざらして、しばらく違和感がありました。

しかし、コナラやミズナラのドングリにはそれよりも多くのタンニンが含まれ、かなりの渋いことがわかります。