害獣だった鹿が町の名物になるまで。どこよりも新鮮なシカ肉を届けるために【三陸・大槌のジビエプロジェクト vol.01】

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  • 猟師にハントされたエゾシカ
  • MOMIJI株式会社の社屋
  • MOMIJI株式会社の大槌鹿のコク旨シチュー
  • 大槌ジビエの鹿肉
  • MOMIJI株式会社代表の兼澤幸男さん
  • MOMIJI株式会社代表の兼澤幸男さん
  • 岩手に生息するエゾシカ

害獣のシカを「まちの財産に」を合言葉に

リアス式海岸で知られる三陸。そのほぼ中心に位置する町が、大槌町です。古くからシャケをはじめとした漁業が盛んで、沿岸部でありながら町の大部分を山林が占めているため、野生動物が数多く生息しています。

大槌町で「大槌ジビエ」が知られるようになったのは、東日本大震災後、町へと戻ってきた兼澤幸男さんが2020年に設立したMOMIJI株式会社がきっかけです。MOMIJI株式会社は、鹿肉の加工製造・販売、ツアー、講習会などを行う地元企業で「〝害獣〟を〝まちの財産に〟」を合言葉に、捕獲したシカを地域資源として活用しています。

代表の兼澤さんは、生まれも育ちも大槌町。町外で船乗りの仕事をしていたときに東日本大震災が起こり、母親の安否が確認できなくなり帰郷。その後、町内の鹿による農作物の被害が甚大であることを知り、2015年に狩猟免許を取得します。

岩手県のシカは約10万頭いると推測されており、猟師の高齢化や東日本大震災の原発事故などによる影響で害獣駆除はどの町でも思うように進まず、農作物の被害は増える一方でした。

町から委託を受け、増えすぎたシカの駆除活動に参加するうちに、兼澤さんは捕獲後のシカの廃棄に疑問を感じるようになったといいます。シカの命を奪うことに葛藤した末、一度は狩猟をやめたこともありましたが、町内の駆除頭数が激減したため、兼澤さんは狩猟を再開します。

奪った命を価値のあるものにするために

そして「奪った命を価値のあるものとして循環させたい」という兼澤さんの思いが醸成されてゆき、それに共鳴する仲間とともに町に働きかけを行います。紆余曲折を経て2020年にMOMIJIを創設、岩手県初の鹿肉加工場「ジビエWorks~三陸やま物語~」を建設し事業化を成し遂げます。

今や東京や仙台などのレストランで評判の「大槌ジビエ」は、MOMIJIクオリティあってこそ。それは、猟場の新山高原にあらわれるシカは、ドングリなどの実をたっぷり食べて育ったため肉質が良いことに加え、ハンター兼澤さんの狩猟&解体技術の高さによります。

撃つシカは3歳以下の若い個体のみ。そして、頭か首を狙い即死させることで、余計なストレスをかけないことがポイントです。そして仕留めたら素早く丁寧に血抜きし、工場へと搬入。1時間以内のスピード処理を行うことにより、フレッシュで臭みのない、柔らかい鹿肉を味わうことができるのです。

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