「衝撃のアウトドア本」発掘レビュー! STRANGE OUTDOORE BOOK vol.08『無人島、不食130日』

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  • 無人島、不食130日
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  • とみさわ昭仁
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物を持たず食事も摂らない生活とは?

ぼくの職業はフリーライターだけれど、たまに「プロ・コレクター」を名乗ることもある。子供の頃から物を集めるのが好きで、古本だのレコードだのと何でもかんでも集めてきた。やがて古物商の免許をとって古本屋を開業し、なおかつコレクション論の本まで出したのだから、そろそろコレクターのプロを名乗ってもよかろうと思って、プロ・コレクターという肩書を考えた。

数年前に「断捨離」という言葉が流行りましたね。新たな不用物の入手を「断」ち、すでにある不要な物を「捨」て、物への執着から「離」れる。元はヨーガの思想からきている言葉だ。ぼく自身は断捨離とはまったく無縁の人間で、部屋には必要か不要かを問わず、いろんな物が溢れかえっている。

そんなぼくとは対極にいるのが、本書の著者である山田鷹夫氏だ。以前は大手電力会社でサラリーマンをしていたが、あるとき『一日一食健康法』(小倉重成/講談社)という本と出会う。その影響を受けて一日一食の生活を経たのちに、「人は食べなくても生きられるのではないか?」という命題にぶつかり、ついに「不食」へと辿り着いた。

そう、不食──すなわち食べない生き方である。

彼は物を持つか持たないかなんて次元を通り越して、食事すら摂らないことを提案する。メシを食わないのだ。いわば断捨離のさらに先をいく「断シャリ」だ。

山田氏は、自身の不食活動を『人は食べなくても生きられる』(三五館)として、2004年に出版した。今回紹介する『無人島、不食130日』は、そんな彼が無人島に渡って130日間の不食生活に挑戦した際の記録である。

「不食」と「飽食」のどこに位置するのか?

実は、前著『人は食べなくても生きられる』には、いろいろと毀誉褒貶がある。それは無理もないことだ。食べなくても生きていける人間なんて、現実の世界にいるはずがない。人間に限らずほとんどの生物は、なんらかの形で外部から栄養素を取り入れることで生命維持をおこなっている。食べずに生きるのは科学的にあり得ないことだからだ。

で、実際に『人は食べなくても生きられる』を読んでみると、タイトルとは裏腹に山田氏はちょいちょい飲んだり食べたりしてるんですね。そりゃ読者も怒るわい。

でも、ちょっと待てよ、とぼくは思う。世の中ゼロか100かだけでは語れないものだ。食事のベクトルの対極が「不食」と「飽食」だとしたら、その間はシームレスに存在している。日常的に大食いだけどたまに断食する人もいれば、基本は不食だけどまれにつまみ食いする人がいてもいいじゃないか。

そこで本書『無人島、不食130日』だが、案の定、山田氏はつまみ食いをする。島での不食生活を開始して9日目、浜辺でたまたま捕まえたハリセンボンを、自らさばいて食べてしまうのである。不食、破れたり! というか、ハリセンボンって食えんの? フグの一種だから毒あんじゃないの?

調べてみると、ハリセンボンはフグの仲間ではあるものの毒性はないとされている。とはいえ未解明の点も多く、厚生労働省は肝臓および卵巣を食べられない部位としているそうだ。仮に食べられたとしても、フグの一種を素人がさばいて食うというのは、無謀すぎる。ハリセンボンを食べた山田氏は、こんなことを言う。

〈ハリセンボンは美味しい! タマゴが旨い。もっと旨いのはレバーだ。刺身にしていただいた。〉

ほんとに大丈夫か、この人。


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