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登山時の「気象遭難」に要注意! 市街地とはまったく違う山の気象の特徴と天候急変の備えとは

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「気象遭難」という言葉をニュースなどで聞いたことがあるでしょうか。山では、山麓の平地とはずいぶん気象条件が異なることがあります。とくに、標高の高い山では、気象条件が平地とはかなり違います。山岳ライターの羽根田治さんが書かれた『ドキュメント 気象遭難』(山と渓谷社)では、突風や落雷、雪崩、低体温症、凍死など、気象条件が原因となって起きた山岳遭難の事例が数多く紹介されています。

ほかにも、山岳特有の気象条件が原因で起きた遭難事故を紹介する書籍はたくさんあります。一般的にあまり知られていない、低体温症について詳しく紹介したものなどもあります。

街中と異なる山の気象条件とは?

平地より高く盛り上がっているところを「山」と呼ぶわけですが、標高が高くなればなるほど、気温が低くなるということが最も大きな特徴でしょうか。

北海道や東北などの北国は別として、関東や西日本の平地なら、冬でもそんなに雪が積もることは多くありませんが、同じような緯度にあっても、富士山や北アルプスの山々が真っ白に雪をいただいているのはそのためです。

目安として、標高が100m高くなるごとに気温は約0.6℃低くなるとされています。例えば、平地の市街地が20℃だとすると、標高1000mの山では14℃、2000mでは8℃! 3000m級の山ともなれば、わずか2℃です。

標高3,776mの富士山なら、23℃も低い計算となるので氷点下。街中で暮らしている人には、ちょっと想像しにくい環境なのです。暑さ、寒さの感じ方は季節によって変わりますが、真冬以外の季節に、気温が10℃を下回るとかなり寒く感じるものです。

また、風が吹いているときには体温が奪われるため、体感温度はさらに下がります。風速1mあたり約1℃低く感じるため、風が強いときはさらに寒い思いをすることになります。地面のでっぱりである山地では、当然平地に比べて風も強い傾向にあります。

筆者は5月の末に九州のくじゅう連山へ行って来たのですが、街中は晴れて夏日の予報。しかし、標高1,700mの山上部は震えるほど寒かったです。事前に山岳気象の予報サイトを確認したところ、入山時の気温は10℃。実際には、かなり強風が吹いていたので、体感的には5℃を下回るような感じでした。

朝、神戸を出発したときは半袖で充分だったのですが、標高1,300mの登山口に着いたらすでにかなり寒く、歩きはじめる前に防寒着を着こみました。天気が悪くて小雨なのか霧なのかわからない細かい水滴が舞っているので、レインウェアも上下着用。フードをかぶって襟元をしっかり閉めました。

筆者は油断して手袋を持って行かなかったので(初夏だし、2,000m以下だし……)、指先はかじかむほど冷たかったです。震えながら歩いて、お宿に着いて温泉に浸かったときにはほっと生き返るような心地でした。

霧の街として有名なロンドン、日本では釧路などを別にすれば、市街地で霧が発生することはさほど多くないかと思います。霧なんてほとんど見たことがないという人もいますよね。でも、山では珍しくありません。霧で視界が悪いと、道がわからなくなることもあるので、その点も注意が必要です。