たどり着けるかは運次第!? 究極の秘湯・野湯探検記 【vol.11】水しぶきのかかるダイナミックな温泉滝! 称名滝の湯/新潟県

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  • 称名滝の湯
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「野湯(のゆ)」とは、自然の中で自噴していて、それを管理する商業施設が存在しない温泉のこと。「日本国内にそんな所が存在するのか?」と思う人もいるかと思うが、じつは人知れず湧出している野湯は全国各地にある。この連載では、野湯マニアの著者が入湯した、手つかずの大自然の中で格別の満足感を味わえる野湯を紹介してゆきたい。

今回は新潟県妙高市にある、マイナスイオン満点の温泉滝を訪れる。

野湯までの道のりには雪渓や源泉露天風呂が!

新潟県妙高山の麓には、個性豊かな野湯が多くある。なかでも、二段に流れ落ちる称名滝と光明滝の付近にある野湯には特に惹きつけられ、何度も足を運んだ。

この滝へ行くときはいつも、平安時代に弘法大師・空海が発見したとの伝説がある「燕温泉」にクルマを駐車する。十数年前に燕温泉スキー場が廃止されてからは衰退の一途をたどっており、行く度に温泉旅館の廃業を見かけては、淋しい思いを抱いてしまう。

燕温泉からスキー場の跡地のコンクリート舗装の道を登ると、10分足らずで無料露天風呂の「黄金の湯」に着く。整備された綺麗な湯船の白濁した温泉に思わず入湯したくなるが、今回の目的地ではないのでそんな思いを振り切って先を急ぐ。

妙高山への登山道を行くが、ここはもともと導湯溝(山中で湧出する温泉を麓の旅館街まで流すための溝)を歩けるようにした簡易道。その片側は深い渓谷の崖になっていて、なかなかスリリングである。崖のはるか下にも「北地獄谷」と呼ばれる野湯があるが、アクセスは困難なので今回は諦めた。

訪問時は初夏であったが、断崖に沿って斜面を横切るトラバース道には大きな雪渓があって滑りやすい。下が空洞になって踏み抜くリスクもあるので、慎重に歩いてゆく。

無事に雪渓を越えた先には一軒の小屋を発見。中には管理人の人がいた。

ここは赤倉温泉に温泉を供給する源泉小屋で、周辺の十数カ所の源泉を集めて麓にパイプで送っているようだ。

そしてこの小屋の奥に、露天風呂を発見。この露天風呂に入れないか管理人の人にお願いしたところ、快く入湯させてくれるというので湯浴みさせていただいた。

かすかに硫黄臭の漂う無色透明の綺麗な湯で、かなり熱い! おそらく湯温は45度以上で、数分入湯すると肌が赤くなるほどだった。

小屋の横の登山道脇には冷鉱泉の湧水もあったので、風呂上がりに飲んでみることに。ほのかに硫酸塩泉の苦しょっぱい温泉の味がして、おいしく喉を潤すことができた。

壮大な二段の温泉滝が出現!

源泉小屋から十数分登ると、谷の前方奥に2本の滝が見えてきた。

登山道の山肌には白く濁った、小さな流れが幾筋かあり、あたりに硫黄臭が漂いはじめると、自然と気分が高揚してくる。さらに登ってどんどん近づくと落差約40mの光明滝、その上に落差約60mの称名滝とが、二段の連爆のように迫ってきた。

妙高山への登山道から外れて右に進むと、青白い水が流れる小さな川に出た。明らかに温泉成分を含有しており、辺りを漂う硫黄の香りにワクワクしながら手を入れてみるが、温度は低く入浴には厳しかった。

温泉の川を石飛びするように渡ると、前方に称名滝がドーンと現れた。滝の岩肌には透明な硫黄泉、墨っぽい硫黄泉、そして沢水が流れている。岸壁は温泉成分で赤をベースとしてまだらに黄土色や黒に染まっていて、自然の造形に芸術的な美しさを感じる。

湯がたまっていたらラッキー! ミルキーブルーの「滝の湯」

滝に向かって少し登ると岩風呂のようなものが見えてきた。この湯船は燕温泉組合により整備されている「滝の湯」である。ここは2000年代頃までは常時湯を張っていたようだが、それ以降は落石などのリスクもあるということで空っぽになっていることが多い。過去何度も訪れたが、毎回そこに湯はなかった。

しかし、湧出量の検査などで一時的に湯が張られていることもある。今回は幸運にも、ミルキーブルーの湯が満々とたまっていた。

人工の湯船なので厳密には野湯ではないかもしれないが、自然のアートを施したような絶壁を落ちる称名滝を見上げながらのワイルドなロケーションである。もちろんよろこび勇んで入湯した。

入る前は青白かったお湯は、入湯すると湯の花が舞い上がって黄緑色へと変わっていく。湯温は40度ほどで、適温の心地よい硫黄泉。

壮大な滝を目の前に、大自然の懐の深さを感じる。まるで日常生活からかけ離れた別世界のようで、嫌なことを全てを忘れさせてくれた。

まさに入湯できるかは運次第のこの野湯に、今回入ることができたのはとてもラッキーであった。


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