【書評】今どきまっとうなアウトドア本 vol.09『「サボる」防災で、生きる』

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  • 「サボる」防災で、生きる「書影」
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  • 「サボる」防災で、生きる「寒川家自宅」
  • 「サボる」防災で、生きる「自宅で庭キャンプ」
  • 「サボる」防災で、生きる「自宅で庭キャンプ」
  • 「サボる」防災で、生きる「書影」

アウトドアシーンでは「現場」で色々なことが起こります。だからこそ、知識を得てから出かけることは役に立つし、何より楽しい。フィールドから帰ってきて復習するもまた良し。この連載では、そんな場面で活躍する本を古今東西問わず取り上げます。

今回は、アウトドアと防災のプロの暮らしに学ぶ〝ラクに備える〟防災についての一冊。アウトドアで快適に過ごす知恵は、そのまま災害時に身を守るスキルとなる! キャンプを楽しみながら防災力を高めるその秘訣とは?

〝サボる防災〟とはいったいどんな意味?

「サボる」。評者は得意中の得意です。できるだけサボって、少しでもラクをしたいと常々考えています。けれどそれは、あまりおおっぴらに言えることでもなくて、誰も見てないすきにこっそりサボるとか、たぶん、「サボる」ということに対して、多少の罪悪感を持っているのだと思います……。

けれど、本書はタイトルが「サボる」なのです。ここにどんな意味があるのか。

「はじめに」から、少しだけ引用してみます。

「僕のライフテーマは「サボり」です。ネガティブなイメージのある言葉ですが、サボれない人生なんて考えられない。日常を元気にするためにサボることは、目まぐるしい世の中にも大切なことだと思うのです。大好きな焚き火とハンモックはサボリの2大ツールでもあります。

(中略)

『「サボる」防災』とは、防災をサボるのではありませんよ。肩の力を抜いて、自分たちの足元を見つめ直し、将来の人たちのことも考えて、自分たちに合った心地のいい防災を作り上げてほしいのです」

「サボる」ことと「防災」がどうつながっていくのでしょう。

「サボる」防災で、生きる「自宅で庭キャンプ」

アウトドア活動と日常がボーダーレス

アウトドアライフアドバイザーとして長年活動してきた寒川一さん、せつこさん夫妻。お二人とも海が好きで、浜辺まで111歩という海の近くに家を買って17年間住んでいたそうです。ところが、2019年に各地で大きな被害を出した台風で、家の屋根が半壊。

「気象条件が変わってきている、これまでの常識は通用しない」と直感し、より安全な住環境を求めて、「海抜50m以上」「川から離れている」「背後に山や崖がない」など、災害に強い条件を満たし、かつ(大好きな)海には近く、楽しんで暮らせる地域であることなどを考慮しながら移転先を検討。ハザードマップに頼るのではなく、地形図などもしっかりと確認しながら、現在のお住まいと出会ったそうです。中古ながら非常に堅牢な建物で、焚き火ができる庭があることも決断する要素のひとつだったのでしょう。

そんなこだわりで見つけた山小屋風の素敵な建物の中には、アウトドア用品がぎっしり。彼らにとっては、「日常生活」が、ほとんど「アウトドア」。

例えば、

自宅で庭キャンプ。庭にタープを張り、友人たちを招いて、気軽に野外ランチを楽しむというのが定番だそうです。焚き火ができるファイヤープレイスも作ってあり、焚き火とバーナーを併用すれば、複数の加熱調理も同時にできます。使用するグリルパンや鍋なども、ふだん家のキッチンでも使っていて、区別はありません。初めて使う道具でも、庭キャンプで使い勝手を試しておけば、フィールドへ持っていくときも安心ですね。

こんなふうに、「防災」と「暮らしの楽しさ」を基準に選んだ家で、「アウトドアの要素を取り入れた日常」を楽しんでいるのが、お二人のスタイルなのです。

「サボる」防災で、生きる「自宅で庭キャンプ」
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