ハチ刺されは2度目が危ないって本当? 身近な猛毒生物の〝生態と対策〟【vol.02 ハチ・対策編】

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  • 食べ物とキイロスズメバチ
  • 流水で手を洗う人
  • 黒い服でキャンプをする男性

アウトドアでも日常生活でも、もっとも出会う確率が高い猛毒生物といえる、スズメバチとアシナガバチ。前回の記事では、身近な猛毒生物の生態について、野外における危険生物への対策研究とその指導を専門とする、一般社団法人セルズ環境教育デザイン研究所の代表理事所長・西海太介(にしうみだいすけ)さんに、詳しく教えて頂きました。

今回は、「では、どう対処すればいいのか?」「万一、刺されてしまったら?」について解説してもらいます。

ハチ毒で最も怖いのはアナフィラキシーショック

「ハチは『毒のカクテル』と称されるほど、さまざまな成分が混じった毒をもっています。刺されるとその部分が赤く腫れあがり、激しい痛みと腫れに悩まされます」(西海さん)

ハチの針は産卵管が変化したもので、メスのみがもっています。スズメバチは体が比較的大きいだけに毒量も多く、オオスズメバチに刺されたことがあるという西海さんは、「チクっというよりは、ドン、と撃たれたような衝撃でした」と言います。

ただし、毒そのものが人間の致死量に達するには非常にたくさんのハチが必要なので、通常は毒のみで死亡にはいたりません。ハチによる死者が多い原因は、私たちの体が過剰に反応する「アナフィラキシーショック」によるものです。

「アナフィラキシーショックとは、アレルギー性の重篤な全身性症状で、息が苦しくなったりめまいがしたりと、刺されたところ以外に症状が表れます。症状が出るかどうかは人によりますが、刺されるのが初めての人よりも、2回目以降の人のほうが起こる可能性が高いです」(西海さん)

ただし、初めて刺されたときにアナフィラキシーショックを起こす人もいるので、油断は禁物。刺されないよう十分注意する必要があります。

正しく覚えておきたいハチの被害に遭わないための知識

話を聞くほどに恐ろしいハチですが、被害に遭わないためにはどうしたらいいのでしょうか。

ハチについて注意すべき3つのポイントは「色」「動き」「ニオイ」だそうです。ただし、「情報がひとり歩きしている感が強い」と西海さんは言います。たとえば、「ハチが黒いものを攻撃する」という話を聞いたことがある人も多いでしょう。

「それはある意味本当です。ただし、黒を見たから怒る、というわけではありません。黒などの濃い色は、ハチが気にしやすい色であり、ハチが攻撃モードになったときに最初に狙う色なのです。色だけで考えるのではなく、動きやニオイと合わせて考えることが大切です」(西海さん)

黒い服が必ずしもダメなわけではないとのこと。なので、うっかり着てきた場合でも慌てる必要はありません。可能なら、目的や時間帯よって服の色を選ぶといいでしょう。

では「動き」についてはどうでしょうか。ハチが近づいてきた場合、振り払ったり逃げたりせずじっとしていたほうがいいといわれますが、正しいのでしょうか。

「全般的には、ハチを振り払うなどの大きく素早い動きをしないほうが安全です。体を小さくする、ゆっくり後ずさりをするのは理にかなっています。巣からの距離によってハチの行動パターンは変わりますが、巣が近いか遠いか判断できないことも多いはずです。遠ければ、振り払ってもハチは気にしないことも多いです。もし、たくさんのハチが出てきて刺された場合は巣が近いので、そうなると走ってでも逃げるしかありません」(西海さん)

では、「ニオイ」についてはどうでしょうか。

「ハチ同士はフェロモン(ニオイ)でコミュニケーションを取るので、お酒、シャンプー、香水などニオイの強いものを気にしやすく、お弁当やバーベキューにも近づいてくる可能性があります。一般的には、彼らが自分から飛び去るまでじっと待つのが最も安全です。ただし、もし頻繁に来るなら巣が近いか、ハチの行動範囲内の可能性があるので、場所を変えたほうがいいでしょう」(西海さん)

「私たちは彼らが住んでいる場所に行ってキャンプなどをしているので、ハチに出会うリスクをゼロにするのは不可能です。いるということを前提にして動いていかなければなりません」(西海さん)

もし、知らない人に家の周囲をうろつかれたり、騒音を出されたりしたら、私たちは恐怖や怒りにかられることでしょう。ハチにとっても同じです。彼らの生活圏に入り込んでいるという意識をもち、謙虚に行動することが、お互いの安全につながるでしょう。


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