毒の強さは国内最強クラス! コブラの仲間の毒ヘビ・ウミヘビの〝生態と対策〟とは

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  • 向かってくるウミヘビ
  • エラブウミヘビ
  • 陸に上がったヒロオウミヘビ
  • 泳ぐウミヘビ
  • イラブーの燻製

アウトドアを楽しむにあたり、できれば出会いたくないのが危険生物の毒ヘビです。毒ヘビというと陸棲のものをイメージするかもしれませんが、実際は海にもいます。国内ではおもに南西諸島で見られるウミヘビです。

なかでもエラブウミヘビは、沖縄で「イラブー」と呼ばれ、宮廷料理にも用いられていた伝統的な食材です。滋養強壮や疲労回復に効果があるとして現在も食べられており、真っ黒な燻製を市場などで見ることができます。

食材として利用される一方で、危険な一面もあります。ウミヘビは分類上コブラの仲間であり、非常に強い毒をもっています。しかし、ユニークな進化を遂げたとても興味深い生物でもあります。

ウミヘビの生態とその毒について、野外における危険生物への対策研究とその指導を専門とする、一般社団法人セルズ環境教育デザイン研究所の代表理事所長・西海太介(にしうみだいすけ)さんにお話をお聞きしました。

陸地から海へと戻った2タイプのウミヘビ

サンゴ礁が発達し、多種多様な生物が育まれている温暖な南の海。ウミヘビが暮らすのはそんな場所です。

「日本近海で見られる爬虫類のウミヘビは9種類です。肺呼吸をするので海面に浮上して息継ぎをし、尾は縦に平たく泳ぐのに適しています」(西海さん)

実は、ウミヘビと呼ばれる生物には魚類もいて、これには毒はないとのこと。ちょっとまぎらわしいですが、海にいるヘビのような生物ということで名付けられたようです。

爬虫類のウミヘビはさらに、海と陸の両方で暮らす「半陸棲」と、生涯を海中で過ごす「完全水棲」に分かれるといいます。おもしろいことに、進化の過程で先に現れたのが半陸棲のウミヘビだそうです。

「最初に海に進出したグループは、東南アジアにいた陸棲コブラの一部が、海でも暮らすようになったものと考えられています。卵を産むグループで、卵を空気中に置く必要があることもあって、海辺の岩場などの陸上で出会うことがあります。エラブウミヘビが代表的です」(西海さん)

その一方で、完全水棲のウミヘビは、これよりも後の時代に現れた種です。

「陸棲のコブラのうち、胎内で卵をかえして子ヘビを直接生む胎生の性質を獲得したものがいました。この一部が海に進出したのが完全水棲のウミヘビで、水中で子を産むことができ、陸に上がる必要がありません。このタイプにはセグロウミヘビなどがいます」(西海さん)

海から陸地に適応した生物が、また海へと戻った例はクジラやイルカなどのほ乳類に見られますが、爬虫類でもあるのですね。なぜそうなったのか、太古の昔に思いを馳せるとさまざまな想像がふくらみます。

マムシの4倍以上の非常に強い毒をもつ

生物がもつ毒の強さの指標となる、「LD50(半数致死量)」という数値があります。たとえばマウスが100匹いたときに、個体差があるなかで半分の50匹が死に至る毒量のことで、数値が少ないほど毒が強いといえます。

「LD50は体重20gあたり、マムシは約20μgでハブが約40μg、ヤマカガシが約5μgです。ウミヘビは種類によって異なりますが、エラブウミヘビがおよそ5.6μg、セグロウミヘビにいたってはおよそ2μgです」(西海さん)

つまり同じ量だと、マムシの毒はハブの倍の強さで、ウミヘビはヤマカガシと同程度かそれ以上ということになります。

「ウミヘビの毒にはさまざまな成分がミックスされており、神経毒成分も含まれています。咬まれると呼吸困難やしびれ、血圧降下などを引き起こし、死に至る可能性があります」(西海さん)

さらに怖いのが溺れることです。

「ダイビングなどの際だと、水中で咬まれることが想定されます。そのまま溺れる恐れがあるので、一刻も早く陸に上がるようにし、病院へ行ってください」(西海さん)


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