たどり着けるかは運次第!? 究極の秘湯・野湯探検記【vol.14】
透き通った青白い温泉がふんだんに流れる「硫黄取りの湯」/秋田県

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なかにはアトラクション的な湯船も

沢の流れには所々に落ち込んだ窪みや、小さな滝つぼなど、入浴が可能なスポットがあちこちにあった。それぞれ微妙に湯温が異なっており、もちろん大きさも深さも様々で、いろんな湯船を楽しむことができる。

入湯して沈殿物が舞い上がりお湯が濁っても、透明度の高い豊富なお湯が勢い良く流れるので、すぐにクリアになっていく。不純物が一切なく、とてもクリーンな環境で湯浴みができたのである。また少し澱んだ場所の底には真っ白な硫黄泥の沈殿物が溜まっており、それを身体に塗ると、泥パックで肌がツヤツヤになって行く。

小さな滝を見つけた。その滝壺は広くて、肩まで浸かれる快適な湯船になっており、滝のお湯を肩に当てて打たせ湯を楽しむ。さらに滝の上に登って滝壺に滑り降りるウォータースライダーのようなアトラクションまでも満喫する。

湯加減も大きさも楽しさも、ここがベストな極上の湯船かもしれない。あまりに気持ち良かったため、湯から上がるのが実に名残惜しい。一日中湯浴みをしていても、何回ここを訪れても、飽きることなどないのではないかと思ってしまった。

昔は硫黄の採掘場だった「硫黄取りの湯」

この湯ノ沢は、沢全体が野湯になっているが、火山活動に伴う有毒ガスの危険性を喚起する札が立てられており、リスクをしっかりと認識して行動しなければならない。

20世紀の半ば頃にはこの付近には硫黄の採掘場があった。当時は約200人の労働者が働いていて、大量の硫黄が採集されていたという。沢の上部付近に硫黄鉱山が操業していた頃に築かれたであろう、崩れかかった石垣があった。ここはかつての硫黄採掘場であることから、野湯愛好家の中では「硫黄取りの湯」と称されている。


ここには7月~11月くらいで積雪の無いタイミングでの訪問をお勧めする。積雪期や残雪期にはルートファインディングは困難で、積雪の中の長時間歩行は厳しい。例年6月頃までは梅雨の雨に加え、雪解けで登山道が沢になっていたり、湯の沢も冷たい雪解け水で温度が低くなりがちである。

夏から秋にかけて、ここで野湯を満喫すれば、間違いなく虜になって何度も訪問したくなるだろう。

                              

【データ】
■硫黄取り沢の湯
秋田県鹿角市八幡平

JR八幡平駅から後生掛温泉公共駐車場までクルマで約30分

  

【プロフィール】
瀬戸圭祐(せと・けいすけ)

アウトドアアドバイザー、野湯マニア。NPO法人・自転車活用推進研究会理事。自動車メーカー勤務の傍ら、自転車・アウトドア関連の連載、講座などを数多く行っている。著書に、全国各地の野湯を訪ね歩いた冒険譚『命知らずの湯』(三才ブックス)、『快適自転車ライフ宣言』(三栄)、『雪上ハイキングスノーシューの楽しみ方』(JTBパブリッシング)などがある。2024年2月現在、足を運んだ野湯はトータルで約100湯。

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