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猛暑が終わってこれから活発化? アウトドアの厄介な刺客「吸血鬼」にご注意

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  • 刺す虫
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温暖な時期のアウトドア活動での困りごとのひとつが虫刺され。虫よけスプレーや蚊取り線香などの対策グッズはいろいろあるけど、それでも刺されてしまうこともありますよね。しばらくかゆいのをがまんしていれば治まることもありますが、刺されるとやっかいなコトになってしまう吸血鬼もじつはいろいろ。今回は、「刺す虫」について。

人類最大の敵は「蚊」

地球上で、最も多く人間の命を奪っている生き物ってなんだかご存知でしょうか。ここ数年、被害例が急増しているクマ? ライオンやトラなどの猛獣? それとも毒蛇? ダントツの一位は、なんと「蚊」です。少々古いデータですが、2016年にビル・ゲイツ財団が発表した数字によると、年間約72万5000人が蚊によって命を落としています。世界全体での数字とは言え、恐ろしい数です。しかし、統計として公式に把握されている数だけなので、実数は150万~300万人ほどではないかと言われています。

蚊に吸血されたことが直接の死因になることはありませんが、地域によってはマラリア、デング熱、ジカ熱、西ナイル熱などの病原体を媒介するため、それらの感染症で亡くなる人が多いのです。

温暖化で吸血虫の生態にも変化が? 家で寝ているときに刺してくる蚊は、ほとんどが「アカイエカ」。キャンプなどの野外活動で刺してくるのは「ヤブカ」。冬場に、なぜかビルの地下などで刺されるのは「チカイエカ」。日本で吸血被害を与える蚊は、ほぼこの3種類です。都市部の地下街などで通年活動するチカイエカを別にすれば、蚊の活動はおおむね4月~10月頃。秋も深まってきた頃に出てくる蚊を「忘れ蚊」と雅な呼び方をすることもあります。

蚊は気温が15℃を下回ると活動が低下するとされていますが、温暖化が進むと、生息域が拡大するだけでなく活動時期も長くなるのです。(逆に30℃を超えると活動が低下するので、猛暑シーズンは意外と被害が多くありません。これからが本番?)

野外によくいるヤブカは、正式名をヒトスジシマカと言い、その名の通り黒いボディにくっきりとした白い縞があるのが特徴。これまでは北海道と青森にはいなかったのですが、今後はどうなることやら。

現在、まだ国内では定着が確認されていないものの、散発的に発生しているのが「ネッタイシマカ」。デング熱などを媒介する恐ろしい蚊ですが、温暖化が進むいま国内で定着する可能性もあります。

ほかにもいる厄介な吸血鬼たち

蚊は日常生活でもよく出会うため、対策はそれぞれされていると思いますが、野外で偶発的に出遭うその他の吸血鬼のことも知っておいた方がいいと思います。体質的に、虫に刺されやすい人とそうでない人がいるのですが、筆者は明らかに刺されやすいタイプ。吸血虫がいるところでは、だいたい真っ先に(あるいは、ひとりだけ)被害に遭います。

数年前の8月、信州の戸隠高原を歩いていたときのことです。高原の池のほとりで、突然アブの大群に襲われました。その時二人連れだったのですが、私だけが集中的に攻撃されて、たまらず走って逃げました。アブの生息地は水辺なので、車道に出たら大丈夫かと思って走ったのですが、ずっと追いかけてきます。

手に持っていたうちわで打ち払いながら全力で走りましたが、アブが飛ぶスピードはなかなかのもので、逃げ切るのは無理かも……。立ち止まるとたちまち餌食になることは明白だったのですが、振り切るのが無理なら、物理的に防御するしかないと考えて、レインウェアを着込むことにしました。

わかっていたこととは言え、立ち止まってバックパックを下ろし、中からレインウェアを出して着るまでの間に、背中や腕などを10か所以上咬まれました。

皮膚に差し込んだ口器でストローのように吸血する蚊と違って、アブは剣状の鋭い口器で皮膚を切り裂き、流れ出た血をすする、アグレッシブな吸血鬼です。咬まれると痛いし、流血はするし、悲惨です。

また、「ブユ(ブヨ・ブト)」もやっかいな存在。体長が1~5mmほどと小さく、アブと違って気づかないうちに咬まれることがあります。プチっとかゆくなって、「あれ? 蚊に刺されたかな?」と思っていると、だんだんと猛烈なかゆみになってきて、激しい腫れも伴います。

夏の山行中、ブユにまぶたを咬まれて、次第に腫れあがり翌朝には片目がまったく開かない状態になったことがあります。お岩さんもかくやというほどの恐ろしいご面相になり(本人には見えてませんが)、すれ違ったほかの登山者は驚いたと思います。

べつのときには足を複数個所さされて、ジーンズが入らなくなったこともあります。ちなみに、ブユもアブと同様、皮膚を切り裂いて血をすするタイプ。恐ろしいヤツです。

最悪なのが「すけべ虫」。カラダは小さいくせに、被害が大きいのが「ヌカカ」。糠のような蚊、というネーミングなのですが、じつはアブやブユと同じくハエの仲間です。体長1~2mmと非常に小さく、知らない間に咬まれてしまいます。

水辺に多く、活動するのは主に朝と夕方。風があるときには見かけません。コイツの何がイヤって、衣服内に入り込んできて、露出していないところを刺したりすること。とくに女性の柔肌が好きみたいで、「すけべ虫」と呼ばれています(吸血するのはメスなんですが)。咬まれてすぐはわからないのに、しばらくしてから猛烈にかゆくなるのが特徴です。すけべなヤツは大っ嫌い!

被害を予防するにはどうすればいいのか

物理的にガードする方法と、薬剤によってガードする方法があります。皮膚を露出しないように、長袖長ズボン、首元には手ぬぐいやタオルを巻く、帽子をかぶるなど。しかし、夏用の涼しい素材の衣服は、生地が薄いため、虫にとっては〝着ていない〟のと同じだったりします。吸血欲が強いときには、上からガンガン刺されます。

ちなみに、上記のウシアブに襲われたときのことですが、その近くで草刈り作業をされていた方は、つなぎの作業服に長靴、バグネット付の帽子という完全防備のお姿でした。さすがです……。

虫よけスプレーも効果がありますが、汗で流れてしまうので、大量に発汗する時期には、どうしても刺されてしまいがち。こまめに塗りなおすか、暑くても分厚い衣服を着用するか……。悩ましいところです。また、蚊取り線香も役立ちます。蚊取り線香界で最強と言われているのが「パワー森林香」。

携帯できるケースもあって、林業の方などは腰から吊るして使っておられるそうです。ただし、風向きによって死角ができるため、ほかの防御法と併用する方がいいと思います。