たどり着けるかは運次第!? 究極の秘湯・野湯探検記【vol.05】沼尻元湯・洞窟温泉/福島県

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川が地中に吸い込まれる⁉︎ 洞窟温泉が突如出現

もう少し下流に行くと、川が突然、地中に吸い込まれていく場所を発見。

湯の川の流れをしっかり注視して、その地中に落ち込む場所へと、三点確保しながら谷の崖を降りてゆく。するとその先には、入浴可能な横穴の大きな洞窟が。真上に道が通っているために多くの人が気づかず通り過ぎてしまうようだが、隠れた野湯スポットが存在したのである。 

壁の下にぽっかり空いた大穴の底まで入っていくと、その先は水平な洞窟トンネルになっていた。洞壁に削岩機で開けたような穴が残っていることから、人工のトンネルであることがわかる。                 

洞窟は30mほどの長さで、高さも幅も数m以上。向こう側には明るい出口が見える。

出口付近の洞窟内の高さは10mほどあって、その巨大なスケールに驚いてしまう。

洞窟内に源泉は出ていないようだが、流れ込む川の湯量が豊富なので、そのまま寝ころんでぬるめの寝湯を楽しんだ。ここは有毒ガスが発生する源泉地帯からは200~300m以上離れているためリスクは少ないが、原則は立入禁止なのでエクストリームツアーに参加して訪問したい。                    

断崖峡谷を抜けた湯は滝となって落ちてゆく

洞窟を出ると、切り立った断崖の峡谷になる。川は掘削された岩盤の上を流れているので足元は比較的安定しているが、温泉成分で滑りやすい。

ここでは巨大な洞窟の出口を背景に、断崖直下での湯浴みができた。まさに絶景の野湯である。

さらに下流に進むと川が落ち込んでおり、両岸が垂直に切り立った峡谷、ゴルジェになっていた。もちろん硫黄泉のお湯が流れてゴルジェに溜まっているのだが、さすがにここに落ちると戻ってこれなくなりそうなので、その奇観は眺めるだけにしたい。

ゴルジェのさらに先は、落差50~60mの直瀑「白糸の滝」になっている。温泉が流れ落ちる滝といえば北海道・知床の「カムイワッカ湯の滝」や、秋田県・湯沢の「川原毛大湯滝」などが有名だが、この「白糸の滝」は中でも落差が日本一。圧巻のスケールである。  

沼尻温泉は、川のあちこちで野湯巡りが楽しめるほか、洞窟の野湯、断崖直下の野湯、滝と多種多様な景色を堪能することができる、最高の野湯天国であった。

しかし、繰り返しになるが、沼尻元湯一帯は今でも硫化水素が噴出する〝危険地帯〟である。とくに風がないときはガスが溜まりやすいので要注意。危険と隣り合わせの温泉であることを決して忘れてはならない。           

※一部に私有地を含む場合がありますので、野湯を訪れる際は事前に許可を取ることを推奨します。

※1 瀞(とろ)…川の水が深く、流れが非常に静かなところ

                      

【データ】

■施設名:沼尻元湯

■住所:福島県猪苗代町沼尻山 

                

■施設名:洞窟温泉

■住所:福島県猪苗代町沼尻山 

               

■ツアー名:「エクストリーム温泉」ガイドツアー

■集合場所:cafe&activity nowhere

■住所:福島県猪苗代町蚕養沼尻山甲2864

■交通アクセス:JR猪苗代駅から集合場所までクルマで約20分

■URL:https://www.numajiri-lodge.com/nowhere/418/

 

【プロフィール】

■瀬戸圭祐(せと・けいすけ)

■プロフィール:アウトドアアドバイザー、野湯マニア。NPO法人・自転車活用推進研究会理事。自動車メーカー勤務の傍ら、自転車・アウトドア関連の連載、講座などを数多く行っている。著書に、全国各地の野湯を訪ね歩いた冒険譚『命知らずの湯』(三才ブックス)、『快適自転車ライフ宣言』(三栄)、『雪上ハイキングスノーシューの楽しみ方』(JTBパブリッシング)などがある。2023年6月現在、足を運んだ野湯はトータルで約100湯。

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