たどり着けるかは運次第!? 究極の秘湯・野湯探検記【vol.15】 自然と身体が惹きつけられる淡いグリーン色の安らぎの湯「安比温泉」/岩手県

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  • 安比温泉
  • 安比温泉
  • 安比温泉を楽しむ瀬戸さん
  • 安比温泉までの道のりの川石を渡る
  • 安比温泉までの道のりの斜面を歩く
  • 安比温泉に木枠の周りをミズゴケが覆っている
  • 安比温泉に木枠の周りをミズゴケが覆っている

「野湯(のゆ)」とは、自然のなかで自噴していて、人の手が加わった商業施設が存在しないような温泉のこと。「日本国内にそんな所が存在するのか?」と思う人もいるかと思うが、実は人知れず湧出している野湯は全国各地にある。

その形態は様々で、ヤブやガレ場、川の中など、道なき道のはてにある難関もあれば、遊歩道沿いやクルマが通行できる林道沿いにあり、誰でも行きやすい野湯もある。

この連載では、著者が体験した、手つかずの大自然のなかで格別の満足感を味わえる野湯を紹介してゆきたい。 


「元祖」安比温泉は野湯である

20世紀の終盤に、岩手県八幡平の北東、安比岳山麓の何もなかった辺境の地に、株式会社リクルートが一大スキー場を開発し、その後リゾート開発の一環として掘削して整備された温泉は「安比温泉」と命名されている。

しかし安比岳登山道の途中に、静かに湧く野湯の「安比温泉」はその何十年も以前からの歴史がある温泉であり、野湯マニアから言わせれば、場所も泉質も異なる大企業の事業として開発された温泉とは一緒に混同して欲しくない。

そのリゾート地から奥へと進み、舗装が切れた先の荒れた地道の林道(赤川林道)を終点まで行くと、クルマを10台ほどは停められる広場になっており、安比歩道(八幡平登山道)の案内板があった。案内板にも安比温泉はちゃんと掲載されていた。

道標はしっかりしているが足元は……

登山口には安比温泉と書かれた矢印のある木柱が立てられてあり、西に向かって出発するとすぐに赤川ダム(砂防ダム)直下の川の中の徒渉になった。

安比温泉までは何度も橋の無い川を渡るので、山靴にしっかりとしたスパッツで防水対策を施して足元を固めて歩く。対岸へ渡って原生林の中の緩い登りを進む。歩道入口から約800m、標高差にして80mほど上がったところで尾根の最高点となり、そこから左に八幡平方面への登山道が分岐している。ここまでは標識がしっかりしていて直進が安比温泉とすぐにわかった。

この辺り八幡平一帯は熊の生息域であり、遭遇するリスクが高いエリアでもあり、実際昨日に登山道に出没したとか、今朝に目撃されたといったケースもあるため、熊鈴を付けたり皆で大きめの声でしゃべりながら歩きたい。一人ならば歌を唄いながらとか熊スプレーを持って行くなど対策はしっかり準備すべきだ。

道沿いには途中2カ所の湧水ポイントがあった。水の補給には事欠かず、冷たい湧き水で顔を洗って気分爽快である。

分岐の先からは南に進路を変えて緩やかに沢に向けて下っていくが、10分も進まないうちに突然崖崩れの跡のような地肌がむき出しになった斜面に出くわした。

その崩れやすい斜面を慎重にトラバースして行く。なんとか無事クリアできたが、大雨の後などは崖に取り付けられた細い道が崩れていることもあるようだ。そこからさらに少し下ると沢に出た。

山ルートと川ルートがある

この沢は安比川で、この上流付近に目指す安比温泉があるはずだ。対岸のルートまでの川幅は10mほどあった。2本のポールでしっかり身体を支えて滑らないように慎重に、石をつたって渡ることができた。

その先は川の中を遡るルートと、増水時に山の斜面をあがって進むルートにわかれている。前日に降った雨で少し増水していたため、川ルートではなく山ルートを選ぶが、一気に標高差50mほどを登る想定外にキツイ登りだった。実は帰路は川ルートを下ったのだが、多少の増水では川ルートのほうがラクであった。

数百m進んで安比岳への登りと安比温泉への下りの分岐点に着いた。急坂を下って安比川に出たが、やはり水量は多い。思い切ってぴょんぴょんと飛び石で対岸に渡った。滑ったらずぶ濡れになるところである。

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