いつか役立つかもしれないアウトドア道具学vol.2 「僕と熊さんの命を救うためのベアキャニスター」

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  • ベアキャニスター
  • ベアキャニスターの中に食料を入れる様子
  • バックパッカーキャッシュ社の「ベアプルーフ・レジスタント・フードコンテナ」
  • ベアキャニスターが並ぶ

        

アラスカの北極圏で行動するときの心得

僕が四半世紀にわたって冒険旅行を続けてきた、アラスカを旅するときに忘れてはならないのは、野生熊が生息するベアカントリーで行動しているということ。数百キロにわたって無人の荒野が広がるエリアであるから、万が一の事故や怪我、病気などのトラブルに見舞われたときの救助方法を知っておく必要もある。けれども、アラスカをアラスカたらしめているのが、野生の熊さんの存在なのだ。

そのために必要不可欠なのが熊対策の知識である。その心得は、とにもかくにも食べ物の匂いを出さないこと。そして守らなくてはならないのが、テントを設営するキャンプ地での「30mルール」である。

もっともクマさんの訪問を避けたいのは、僕たちが寝ているテントだ。そのため、テントのなかには“食べ物らしき”匂いがするものを一切持ち込まないこと。”食べ物らしき”としたのは、熊さんにとっての食べ物とは、人間にとっての食べ物とは異なるからである。

たとえば歯磨き粉や石けん、制汗剤や虫除けは、熊さんにとって魅力的な匂いのする”食べ物らしき”存在である。こうしたものを、テントのなかに絶対に持ち込まないように心がける必要があるのだ。

それに、僕は日本で使っているテントは、アラスカには持っていかない。日本国内では雨の日にテントのなかで食事をすることがあるので、食べ物の匂いが生地に染みついている可能性が高いのだ。また、熊さんを撃退するためのペッパースプレーの唐辛子エキスをテントにかけてしまったときも、時間が経過すると”食べ物らしき”匂いに変わることがわかっている。

       

 

テントと食料置き場、食事場の位置関係が大切だ

食事を作る場所は、どうしたって食べ物の匂いが残ってしまう。そのため、就寝前に食事場から、別の場所に食料を移動する必要がある。どこに移動するかというと、なにも置いていない食事場と、人が寝ているテントから、それぞれ最低30mの距離を保った場所に食料置き場を設定するのだ。

さらに、テントと食料置き場は、食事場より風上に配置すれば、風にのった匂いにつられてやってきた熊さんは最初に、一番匂いが強い食事場を訪れることになる。そのまわりで匂いを嗅ぎ回っているかぎり問題は起きないし、急いで起き上がってテントの外に出ていけば渋々とどこかへ逃げ去ってしまう。

寝ている僕たちが熊さんに気がつかなかったとき、次に彼らが向かうのは食料置き場である。そうしたときのための必須装備がベアキャニスター(通称=ベア缶)というわけだ。

これは直径20~30cm、高さ40~50cmほどの容器で、頑丈なポリカーボネートでできている。熊さんたちには空けられない蓋がついていて、このなかに入れておくことで食料を守る。熊さんたちが人間の食料の味を知ってしまうと、食べもの欲しさに人を襲うことを常習化させてしまう。これを避けるため、ベアカントリーにある米国の国立公園ではベアキャニスターの携行が義務づけられている。

   

 

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