【日本クマ事件簿 vol.01】大雪山で登山者をヒグマが襲い1人死亡【北海道エリア】

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大雪山唯一のクマによる死亡事故 バラバラに食害された遺体を発見

愛山渓温泉では「9名が夜になっても戻らない」と騒ぎになっており、徒歩30分ほどの「三十三曲分岐」までラッパを吹きながら探しに出る者もいたが、真っ暗で何も手がかりが得られず引き返している。翌日、国策パルプ(現・日本製紙)の山岳部員が、愛山渓温泉から旭岳を経由して層雲峡に向かうルートの途中で、岩場の陰に身を潜めていた8名を発見し、ともに下山した。

事故を受け、8月1日早朝から総勢20名もの捜索隊が現場付近を捜索したところ、第2展望台下のハイマツが茂るエリアにAの頭と足が、付近の雪渓の上で胴体が発見された。いずれも筋肉がほとんど食害されていた状態だったことから、クマが自らの食料と見なして襲った可能性も示唆される。しかし、クマが人間を襲う場合は、空腹や苛立ち、戯れ、恐怖と、さまざまな要因が考えられるため、本当の理由は推測の域を出ない。

同日、遺体近くの笹原で加害グマと思われる個体が確認されたが撃ち損じ、取り逃している。そのままクマは行方知れずとなるが、翌1950年(昭和25年)5月下旬に、現場から10kmほど離れたリクマンベツ川にて捕殺されている。推定年齢14~15歳の雄の成獣で、鼻に残っていた弾痕と、毛色と体型などが一致したため、加害グマであると断定された。

ちなみにこのクマは剥製にされ、1950年(昭和25年)に旭川市で開催された「北海道開発大博覧会」に展示されたそうだが、その後どうなったのかは不明だ。

大雪山ではたびたびクマの目撃情報があるものの、登山者がクマに襲われて死亡した事故は記録に残る限り、本件が唯一である。ただし、登山者の行方不明などはその原因がわからないことも多いため、クマによる事故の可能性も否定はできないだろう。

                        

【データ】

■書名:『日本クマ事件簿』(三才ブックス)

■出版社:三才ブックス

■URL:https://www.sansaibooks.co.jp/shoseki/kuma.html

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